サマソニのマイ・タイムテーブル(仮)

今年3日間のタイムテーブルが発表されたので自分のスケジュール(仮)を組んでみた。

ベスト本格ミステリ2018 (講談社ノベルス)

下井葉子「あなたについて わたしについて」





芥川賞候補作のノンフィクション流用問題で思い出したのが、同じく群像新人文学賞を1987年に受賞し、「群像」の同年6月号に掲載された下井葉子「あなたについて わたしについて」。浦安市の図書館になかったのだが、気になったので千葉市の図書館で借り出してきた。
この受賞作は単行本化されなかったのだが、大量の引用というかサンプリングをしていて、ネタ元(三島由紀夫コクトー浅田彰紡木たくスクリッティ・ポリッティ……)も明記されていた。断章形式のこの作品には、J・ノペティというレプリカントが登場したり(当時流行したエリック・サティジムノペディ”のもじり)、「去年、マリオンビルで」という章題があったり(『去年マリエンバードで』のもじり)。
「あなたについて わたしについて」を推した選考委員は柄谷行人で、その選評は「ニューロマンティックな方向」と題され、文中には「neuromantic」なんて言葉も出てきた。80年代初頭のニューロマンティック(ヴィサージ、デュラン・デュランなどの英国エレポップ)−高橋幸宏『NEUROMANTIC ロマン神経症』(1981年)−ウィリアム・ギブスンニューロマンサー Neuromancer』(1986年翻訳)てな時代であった。
とてつもなく80年代的なポスト・モダン小説だったし、この頃の音楽を聴き返したりすると、たまに「あなたについて わたしについて」を思い出す。特に作中で“Night Porter”の歌詞が引用されてるJapanとか。

映画『わたしを離さないで』

原作者カズオ・イシグロが製作総指揮の1人に名を連ねているためか、わりと小説版に沿った映画化(2010年版)。ただ、タイトルにもなっている「わたしを離さないで」という曲をキャシーが聴く場面の位置づけが違う。
原作ではそのテープは一度失われ、後にトミーが買い直してくれるのだが、映画では最初からトミーからもらったとされる。また、曲にあわせてキャシーが体を揺らしているところを覗き見するのは原作ではマダムなのに対し、映画ではルース。結婚も家族を作ることもできない運命にあるキャシーが、歌詞にある「ベイビー」について恋人ではなく赤ん坊だと勘違いしていたことも映画では触れられていない。原作よりもSF的設定が後景に退き、キャシー、ルース、トミーの三角関係が強調され、映画全体としても恋愛の比重が大きい仕上がりになっている。
ヘールシャムの子どもたちに真実の一端をもらすルーシー先生役は、サリー・ホーキンス。社会によって勝手に存在のありようを規定され疎外された立場へのシンパシーという点では、本作の役回りは、半魚人と恋に落ちた『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)のヒロイン役に通じる面があったかも。

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

ネタバレあり

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noteへの過去原稿アップ

noteにアップしてきた過去原稿がけっこうたまってきたから、これまでの分の一覧を作った。

  • 最近自分が書いたもの
    • 今村昌弘インタビュー、コラム「夜明けの紅い音楽箱」(とりあげたのは村上暢『ホテル・カリフォルニアの殺人』 → 「ジャーロ」NO.63
    • 伊兼源太郎『地検のS』のレビュー → 「ハヤカワミステリマガジン」5月号

ジャーロ No. 63ミステリマガジン 2018年 05 月号 [雑誌]

第71回 日本推理作家協会賞 候補作決定

【長編および連作短編集部門】
いくさの底     古処誠二(KADOKAWA)
インフルエンス   近藤史恵文藝春秋
Ank : a mirroring ape 佐藤究(講談社
かがみの狐城    辻村深月ポプラ社
冬雷        遠田潤子(東京創元社


【短編部門】
ただ、運が悪かっただけ 芦沢央(オール讀物2017年11月号掲載)
火事と標本       櫻田智也(東京創元社『サーチライトと誘蛾灯』収録)
理由(わけ)      柴田よしき(文藝春秋『アンソロジー 隠す』収録)
偽りの春        降田天(野性時代2017年8月号掲載)
階段室の女王      増田忠則(双葉社『三つの悪夢と階段室の女王』収録)


【評論・研究部門】
ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド 浅木原忍(論創社
アガサ・クリスティー大英帝国 名作ミステリと「観光」の時代 東秀紀(筑摩書房
本格ミステリ戯作三昧 贋作と評論で描く本格ミステリ十五の魅力 飯城勇三(南雲堂)
乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか 内田隆三講談社
昭和の翻訳出版事件簿 宮田昇創元社


私は、評論・研究部門の予選委員の一人でした。