円堂都司昭著『ディストピア・フィクション論 悪夢の現実と対峙する想像力』(作品社) 目次
序章 みなさまご存じのディストピア
赤川次郎のディストピア小説
「ぬり絵」としての『東京零年』
第一章 監視と管理
一 悪しき統治を想像する
『「統治」を創造する』の理想像
『われら』『一九八四年』『すばらしい新世界』の硬い公共
身体、言葉、人間関係の支配
科学的管理の洗練
ディズニー的な『プリズナーNo.6』
『一九八四年』と一九八四年の落差
『ドーン』の分人主義
アメリカという名の一人の友人
高度化するセキュリティと対抗手段
『虐殺器官』の管理のフィルター
健康が強要される『ハーモニー』
壁からフィルターへ
二 監視社会の寓話
ディストピア小説フェアの伊坂幸太郎
情報のつなぎあわせ
機械化されたシステム
国という記号を使ったエンタメ小説
見通せない個人に訪れる理不尽な運命
第二章 権力の戯画と理想
一 権力の戯画
保守からみたディストピア『カエルの楽園』
『動物農場』との共通項
プロパガンダか寓話か
サヨクによる政権風刺『虚人の星』
自分の思う現実を置き換えたパズル
安倍でありアドルフである『宰相A』
日本風刺小説のなかの天皇
肥大したマッチョの不能
国民感情の戯画
二 権力の理想
角栄を美化した石原慎太郎
『シン・ゴジラ』の音楽
巨大不明生物出現のシミュレーション
理想の組織的総合力
「Who Will Know」の美しさ
日本が超自我であるカヨコ
ゴジラの異物感
第三章 同調と世代を超えること
一 記憶と絆
『シン・ゴジラ』『あまちゃん』への批判
時間の早送りと巻き戻し
世代を超越するなにか
忘却の罪悪感とらえた『君の名は。』
組紐と「ムスビ」
二 壁による隔離と合唱の連帯感
怒りとともにふり返ってはいけない
レディオヘッドとクイーン
一体感自体がメッセージ
三 同調の光と影
3・11後の音楽
ヒロシマからフクシマへ
「上を向いて歩こう」の回帰
強い「絆」からゆるいつながりへ
『想像ラジオ』の静かな同調
木と声
ヒューマニズムの忌避
『ボラード病』の同調圧力
水俣病患者の「君が代」
RADWIMPS「HINOMARU」への批判
第四章 分断の寓話、都市の統合
一 時間の遡行、精神の退行
『猿の惑星』の国旗
『キングコング』と9・11
過去の隠蔽、未来の変更
『闇の奥』へ遡る
猿と人のキス
戦場のディストピア
『蠅の王』の少年たちと猿
種族の歴史と個人の記憶
科学的ディストピアと神秘主義
二 都市の見えない部分
『ズートピア』の社会構造
群集の人、見えない人
『都市と都市』の見えない壁
分断国家のアレゴリー
『あらしのよるに』における異種族間の友情
ライシテが空無化する『服従』
『呪文』における食
私たちの肖像画としての『東京自叙伝』
『俺俺』の食いあうものたち
無数の私の無責任
第五章 身体とジェンダー
一 身体の支配と逸脱
『百年法』の独裁
昭和と平成、天皇二代に象徴された高齢化
『七十歳死亡法案、可決』の家族事情
『九十八歳になった私』がぼやく
ゾンビの多義性
魂なき体と労働
ロボットとフランケンシュタインの原則
『屍者の帝国』のカラマーゾフ
『ブレードランナー』の模造記憶
幸福の基盤
二 生殖と性差
ロボット/レプリカントの性
『鉄腕アトム』のロボット法
恋愛が無意味な『わたしを離さないで』
逃亡も抵抗もしないクローン
『侍女の物語』における生殖
無自覚、陳腐な悪
『アカガミ』と『徴産制』の出産推進政策
ジェンダーをめぐるバックラッシュ
『リリース』のリベラルな悪夢
性、家族が解体される『消滅世界』
第六章 環境と戦争
一 環境への適応と俯瞰、サバイバル
世界に復讐する『キャリー』
『地球星人』と科学的管理法・優生学
映画『美しい星』の気象予報士
『不都合な真実』が語る大問題と承認欲求
『サバイバルファミリー』と「見えない都市」
「見えない世界」からむき出しの欲望へ
『東京島』と団地
『バラカ』の棄民
東京を問題圏に引きずりこむ
「献灯使」の鎖国と『地球にちりばめられて』
二 戦争と共生
地球市民と『美しい国へ』
『大きな鳥にさらわれないよう』の戦争不在
『この世界の片隅に』の空
歴史の再現と『ディレイ・エフェクト』
『高い城の男』の歴史改変
日本合衆国の狂信
『ミライミライ』における世界地図の変容
ニップノップの多様性
終章 ポスト真実のなかの言葉
一 データと象徴 27
左派マンガとしての『R帝国』
『銃』とAI
『平成くん、さようなら』と『ニムロッド』の差
20象徴であり「空」である「箱の中の天皇」
二 子どもの無垢と子どもじみた無軌道
「アメリカの壁」と『アンダー・ザ・ドーム』
日常の不安と非日常の恐怖の共振
子どもの悪戯
三 一貫性のある過去
『帰ってきたヒトラー』を笑う/と笑う
バベルの塔からポスト真実へ
『華氏451度』とポピュリズム
歴史が『愉しみながら死んでいく』
『図書館戦争』と図書館の現実
『小説禁止令に賛同する』の読者
『地下室の手記』の水晶宮
『君たちはどう生きるか』の過去と未来
人類の経験
あとがき
参考文献
索引