ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

坂本龍一と和賀英良

「坂本龍一のピアノ展」で本人の演奏を再現したピアノ自動演奏を聴き、松本清張『砂の器』の和賀英良を連想した。原作小説では電子音を使った抽象的な現代音楽の作曲家なのに、映像化ではロマンティックなピアノ協奏曲の人に脚色された。むしろ、それゆえに…

渡邉大輔『謎解きはどこにある』

謎解きはどこにある――現代日本ミステリの思想 作者:渡邉大輔 南雲堂 Amazon 栗本薫『ぼくらの時代』と対であるかのように中島梓が刊行した文芸評論集『文学の輪郭』を読んだことが、ミステリ評論に関する私の出発点の一つとなっている。群像新人賞評論部門を…

中上健次と三田誠広

昔読んだ中上健次のある発言が強烈に記憶に残っていて、最近になって今さら気になりだした。時期的にみて『中上健次1970-1978全発言I』、『中上健次1978-1980全発言II』だろうと思ってめくってみたが見当たらない。じゃあ、これかと、柄谷行人との対談『小林…

『コンクリート・ユートピア』

『コンクリート・ユートピア』、昨日観てきた。周辺が壊滅的被害を受けたなか(作中では原因不明)、唯一残ったアパートの住民が周辺地域からの避難民を追い出し、居場所を死守しようとするパニックもの。 すごい。ただ、能登半島地震の報道が続いている今す…

「良い子悪い子普通の子」

今回の松本人志の件で、ダウンタウンがいじめの芸を一般化したとか、その前にとんねるずがとかいう人がいる。でも、太郎冠者や与太郎など、間抜けな人間を笑うパターンは旧くからあるわけで、昔から笑いの多くを揶揄、嘲りなどいじめ的な要素が占めてきたの…

原始神母”原子心母”

喪中なので新年の挨拶はしません。 で、昨年末のふり返り。 昨年12月30日は、ピンク・フロイドのトリビュート・バンド、原始神母の募集した合唱隊に参加して“原子心母”を歌ってきた。同じ月にカール・パーマーが演奏したステージに自分も上ったのだった。 妻…

『エクソシスト 信じる者』

映画ポスター エクソシスト 信じる者 Exorcist Believer 27×40インチ (68.9×101.6cm) US版 両面印刷 ds1-INTL-ADV (tomohochikaze) [並行輸入品] tomohochikaze(トモホチカゼ) Amazon 『エクソシスト 信じる者』。かつて大地震で負傷した妊婦の妻か腹の中の…

『ポスト・ディストピア論』の章題と小見出し

ポスト・ディストピア論:逃げ場なき現実を超える想像力 作者:円堂 都司昭 青土社 Amazon 『ポスト・ディストピア論――逃げ場なき現実を超える想像力』Paradise Lost / Exodus Introduction ディストピアの出入口――『ジョジョ・ラビット』「ヒーローズ」 Chap…

『ポスト・ディストピア論』プレイリスト

https://open.spotify.com/playlist/01rky7tupsZvU6SBeMPF7v?si=4bef644d9bac4276 『ポスト・ディストピア論』執筆中によく聴いていた曲のプレイリスト 1 Eathcry“Post Dystopia” そのものズバリの曲名。 2 David Bowie””Heroes”/”Helden”” 映画『ジョジョ・…

チバユウスケの訃報

ミッシェルガンエレファントのラストライヴを幕張メッセで観た時、近くに小さな男の子を連れたグループがいたのを覚えている。大人たちで囲んでスペースを作ったところで、その子が踊るというかはしゃいでいたり、肩車で揺すってもらってキャッキャしたり、…

はっぴいえんどの時代、坂本龍一、櫻井敦司

【Amazon.co.jp限定】はっぴいえんど (初回生産限定盤) (メガジャケ付) アーティスト:はっぴいえんど ソニー・ミュージックレーベルズ Amazon はっぴいえんどの活動期間と同時代の文学の動向を、はっぴいえんどファースト・アルバムの謝辞に名前があった人物…

「本の雑誌」10月号 書評家座談会

「本の雑誌」10月号の「特集 この人の本の紹介が好き!」の書評家座談会「サバイバルより分業制だ!」(大森望、倉本さおり、杉江松恋)を読む。仕事の種類とその収入の割合についてなど、なかなか生々しくも切実な話をしている。特に次の部分↓ ――でも読むの…

重松清『カモナマイハウス』

最近の自分の仕事 -重松清が考える、空き家問題と定年後のオヤジの生き方「自分を見ていても、アップデートできていない部分がいっぱいある」(取材・構成)https://realsound.jp/book/2023/09/post-1427466.html カモナマイハウス 作者:重松清 中央公論新社…

栗本薫『真夜中の天使』

私もそうだが、ジャニーズ事務所の性加害の件で、栗本薫『真夜中の天使』を思い出した人がけっこういるようだ。1970年代に執筆された同作のように、ひょっとすると芸能界はそういうところなのではないか、という半信半疑の想像は、それ以前から世間にあった…

SUMMER SONIC 2023

今年観たもの ・8月19日 MELT4/amazarashi/New Jeans/[Alexandros]/TWO DOOR CINEMA CLUB/SEKAI NO OWARI/ALI SHAHEED MUHAMMAD(A Tribe Called Quest)/DJ豊豊/星野源/YOASOBI ・8月20日 METALVERSE/NOVA TWINS/ももいろクローバーZ/sumi…

1970年代後半カルチャー論(仮)

1970年代後半カルチャー論をやりたいと思い始めている。W村上など20代作家が多く登場し、新井素子みたいに10代までがデビュー。性意識、キャラクター、文体など小説に変化があった。同時期にはマンガの24年組、JUNEなどBL源流の動きがあり、YMOの…

「音羽キャンディーズ」の時代

1970年代後半。栗本薫『ぼくらの時代』/中島梓『文学の輪郭』、見延典子『もう頬杖はつかない』が注目された頃、早稲田大学文学部文芸専修(当時)の創設に携わり、彼女たちを後押しした平岡篤頼も話題になった。 また、栗本、見延、そして『海を感じる時』…

東京ディズニーランド40周年

今日で東京ディズニーランド開園40周年。このテーマパークを浦安はどんな経緯で招き入れ、地元はどう変化したか。それを日本における街の変化の象徴的な事例として考察したのが『ディズニーの隣の風景 オンステージ化する日本』だった。30周年だった10年前に…

今年の予定

・懸案の評論単著2冊を仕上げる(それぞれ全体の半分以上を書き進んでいるので完成しないことはないはず)。 ・執筆参加本が2冊出る(いずれも自分の担当分は入稿済み)。 ・さらに某企画が通れば参加。 ・書籍化前提で評論連載を始めたい。 ・以前よりスロ…

『新八犬伝』

近石真介死去のニュースを知る。 https://www.oricon.co.jp/news/2252456/full/ 子どもの頃、テレビが壊れ、映らないけど音声だけ聞こえる状態になったことがあった。その期間の夕方、たまたまチャンネルをあわせ、音だけなのに引きこまれたのが、NHK人形劇…

SUMMER SONIC 2022

観たもの 8/20 サバシスター → THE LINDA LINDAS → 渋谷すばる → BLUE ENCOUNT → Awsome City Club → Vaundy → MANESKIN → King Gnu → THE 1975 8/21 新東京 → 羊文学 → 優里 → モノンクル → THE STRUTS →GRIFF → 女王蜂 → milet → MEGAN THEE STALLION → ON…

BLとSFとロック

SFマガジン 2022年 4月号 早川書房 Amazon 「SFマガジン」4月号の特集BLとSFは、BLのルーツ的雑誌「JUNE」に関して、佐川俊彦元編集長インタビュー、同誌の名物企画だった中島梓「小説道場」についての論考(瀬戸夏子)など多くの頁を割いていて、興味深く読…

KING CRIMSON “Starless” (Tokyo 8th December 2021)

https://www.youtube.com/watch?v=laKt80x0E4k キング・クリムゾンの(今のところ)最後のライヴ演奏曲の映像。これを生で観られたのは幸せだった。この曲の中盤で音量が上がっていくとともに照明が赤く赤くなっていく展開は、何度体験してもグッとくるもの…

『同志少女よ、敵を撃て』と『私はスカーレット』

オール讀物2022年3・4月合併号 (直木賞発表) 文藝春秋 Amazon 同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 私はスカーレット 1 (小学館文庫) 作者:林真理子 小学館 Amazon 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』に関し、「どうして日本人の作家が、海…

藤田直哉編著『ららほら2』

「ららほら2」 作者:藤田直哉 双子のライオン堂出版部 Amazon 1月11日発売の藤田直哉編著『ららほら2』(刊行:双子のライオン堂)。私は「第四回 なぜ二〇一〇年代の日本文学はディストピアが主流になったのか」で藤田氏と対談しました。 震災後文学もとり…

『密やかな結晶』、こんまり、断捨離

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。 密やかな結晶 新装版 (講談社文庫) 作者:小川洋子 講談社 Amazon いろいろなにかが消滅し、間をおきつつ次々にそれらの記憶がなくなっていく島。消滅したものを思い出せる人は、秘密警察の記憶狩りにあ…

King Crimson 鑑賞歴

ロバート・フリップが出演したライヴ&彼以外のクリムゾン・メンバーが出演したライヴにこれまでどれだけ行ったか書き出してみた。クリムゾンは来日ごとに複数回行ってたり、とにかくいっぱい金使ったなと実感した。 Robert Fripp出演 King Crimson 2021年×…

『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』のプレイリスト

最近の自分の仕事 -「小説現代」編集長・河北壮平が語る、小説の未来 「外に開いていく革命へと意識を転換するようになった」(構成・取材)https://realsound.jp/book/2021/09/post-854235.html -【ブックハンティング】サリンジャーの壮大な「企み」に挑…

「ケアってなんだろう?」の告知をみて

文化系トークラジオLife「ケアってなんだろう?~令和時代のつながりと責任の話」の告知をみて。 https://www.tbsradio.jp/articles/43401/ 私にとって「ケア」は父母が相次いで入院した数年前から突然、日常になった言葉。そのまま病院で亡くなった父には緩…

ここ2週間ほどの雑感

かつて、「空虚な中心」という日本論(バルト)が一部で流行ったけれど、今では中心などなく、ただ全体がスカスカだ。 この国では、現実を直視しないですませるための呪文として“上を向いて歩こう”がことあるごとにリピートされている。 最近の自分の仕事 -…