ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

XOXO EXTREME『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』

動物学的大幻想曲 アーティスト:XOXO EXTREME 発売日: 2021/05/12 メディア: CD ハードでハードでキャッチーなナンバー、シアトリカルな組曲、昭和歌謡風など、曲ごとの雰囲気の変化が楽しい。特に終盤の“Ride a Tiger”、“フェニキスの涙”のたたみかけが素晴…

「前田愛『都市空間のなかの文学』から考える」視聴しての余談

都市空間のなかの文学 (ちくま学芸文庫) 作者:前田 愛 発売日: 1992/08/01 メディア: 文庫 4月25日、日本近代文学若手研究者フォーラムが催したオンライン・シンポジウム「前田愛『都市空間のなかの文学』から考える」を視聴した。 https://twitter.com/foru…

いろいろあった

最近の自分の仕事 -「文學界」編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 「文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線」 (インタビュー・構成)https://realsound.jp/book/2021/03/post-718053.html -五十嵐律人『不可逆少年』、榊林銘『あと十五秒で死ぬ…

長澤唯史『70年代ロックとアメリカの風景』

70年代ロックとアメリカの風景: 音楽で闘うということ (椙山女学園大学研究叢書 49) 作者:長澤唯史 発売日: 2021/01/29 メディア: 単行本 長澤唯史『70年代ロックとアメリカの風景 音楽で闘うということ』読了。第I部では、キング・クリムゾン、イエス、ジェ…

大江健三郎から『十戒』へ

1月某日 先日の『治療塔』『治療塔惑星』から大江健三郎を遡り『芽むしり仔撃ち』を久しぶりに読み返した。記憶以上によかった。『治療塔』二部作と『芽むしり』は、汚れた地(前者と後者に共通するのは疫病)に見捨てられた弱者と一度は脱出したものの帰還…

山本幸正『松本清張が「砂の器」を書くまで』

松本清張が「砂の器」を書くまで:ベストセラーと新聞小説の一九五〇年代 (早稲田大学エウプラクシス叢書) 作者:山本 幸正 発売日: 2020/02/10 メディア: 単行本 まず、一部を伏字にして引用。 ●●●●は厄介な存在である。議論の通俗さや粗雑さや幼稚さを批判し…

村上龍『希望の国のエクソダス』『ヒュウガ・ウイルス』

希望の国のエクソダス (村上龍電子本製作所) 作者:村上 龍 発売日: 2019/12/04 メディア: Kindle版 ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2 (幻冬舎文庫) 作者:龍, 村上 発売日: 1998/04/01 メディア: 文庫 村上龍『希望の国のエクソダス』(2000年)再読。同作…

小説雑誌編集長インタビュー・シリーズ

-最近の自分の仕事 「小説トリッパー」編集長・池谷真吾が語る、文芸誌の領域 「境界線はなくなり〈すべて〉が小説になった」|Real Sound|リアルサウンド ブック 「すばる」編集長・鯉沼広行が語る、創刊50年の歴史と変化 「文芸誌としてできることをした…

週刊文春ミステリーベストテン 2020 幻の国内回答

今回の週刊文春ミステリーベスト10、国内に回答したつもりだったのにテキストを添付しそこなったまま送信していたことが判明した。真面目にコメント書いたのに……orz というわけで、ここにあげておく。 第一位 『汚れた手をそこで拭かない』芦沢央 日常にある…

東浩紀『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』

ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ) 作者:東浩紀 発売日: 2020/12/11 メディア: Kindle版 私が書いた『ゼロ年代の論点 ウェブ・郊外・カルチャー』(2011年)は2000年代の批評のガイドブックであり、本の締めくくりで東浩紀たちによる2010…

ミステリ専門誌の変動

講談社の年3回刊電子書籍「メフィスト」は最新号の後は休みをはさみ2021年10月にリニューアル。東京創元社は「ミステリーズ!」を来年2月刊の次号で最終号とし、同年夏頃をめどにミステリ、SF、ファンタジー、一般文芸の文芸誌創刊を準備中。光文社の季刊電…

『本格ミステリの本流 本格ミステリ大賞20年を読み解く』

-最近の自分の仕事 桐野夏生『日没』、森川智喜『死者と言葉を交わすなかれ』のガイド → 「小説宝石」12月号 https://tree-novel.com/works/episode/37b12f56ec598aa6012b3bc6a47dbaaf.html 千田理緒『五色の殺人者』のレビュー、ミステリが読みたい!2021版…

“ディストピア小説翻訳者に聞く”/「Life~現実化したユートピア/ディストピア」

-最近の自分の仕事 『危険なビーナス』と『ガリレオ』シリーズの共通項 東野圭吾サスペンス映像化のカギとは https://realsound.jp/movie/2020/10/post-642850.html 鴻巣友季子が語る、マーガレット・アトウッド作品の魅力 「『侍女の物語』は警告の書だった…

「死刑囚表現展2020」

「死刑囚表現展2020」に行ってきた。「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」主催となっているが、植松聖や加藤智大の自意識誇示の“作品”をみせるのは、廃止運動にむしろ逆効果な気が……。それにしても、ポケモンの絵を真似て「死刑廃止Getだぜ!」とか…

「SFマガジン」の思い出

最近の自分の仕事 -太田忠司『遺品博物館』の書評、ハヤカワ文庫創刊50周年特集のエッセイ「本の山のなかで遭遇した「ハヤカワ」」 → 「ハヤカワミステリマガジン」9月号 -「夜明けの紅い音楽箱」(とりあげたのは森村誠一『青春の証明』)、第20回本格ミス…

『日本小説批評の起源』

日本小説批評の起源 作者:渡部直己 発売日: 2020/06/26 メディア: 単行本 著者がセクハラ疑惑で早大を解任された件に関しては釈然としないままだが、「ありうべき小説批評の源流を求めて馬琴から『水滸伝』の奇蹟の注釈者・金聖嘆の「漢文」へ」という紹介文…

西田亮介『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』

コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か 作者:西田 亮介 発売日: 2020/07/20 メディア: Kindle版 コロナに対する政府の初動の実態と国民の認識のズレがどう生じたか検証した本。「耳を傾けすぎる政府」が実効性に疑問の対策を決め、実行に時間が…

キスエク“フェニキスの涙”とリンカネ“レウカンセマム”

(現時点では3人組の)プログレッシヴ・ロックのアイドル、XOXO EXTREME(キスエク)の一色萌が今年、このグループのバック・バンドをしばしば務めているSilent Of Nose Mischief(サイノー)のMorota(Key)と仁科希世彦(Dr)がやっているバンド、re-in.Carn…

『日本沈没2020』

『日本沈没2020』については、ここ↓に書いた。 -『日本沈没2020』は何を描いたのか? 賛否呼んだ同作の狙いを、原作との比較から考察 https://realsound.jp/book/2020/08/post-599671.html このサイトにしては長い原稿になったので削った要素もある。そのい…

「不安の受容」

原発事故後の放射能汚染、地下鉄サリン事件後のテロ、80年代のエイズ、70年代の公害……。実態をよくつかめないまま盛んに報道され不安や恐怖が煽られるけれど、それが続きすぎて日常になってしまうと人々はやがて慣れ、気にしなくなっていく。そんな「不安の…

五島勉、小松左京と氷河期

『ノストラダムスの大予言』(1973年)の著者、五島勉が90歳で死去していたと伝えられた。 https://bunshun.jp/articles/-/39132?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=socialLink 私は『ノストラダムスの大予言』を一つの軸にして『戦後…

『人間革命』不在

市内の図書館に大槻ケンヂ『のほほん人間革命』は単行本と文庫の両方あるのに、あの何巻にもおよぶ池田大作『人間革命』が一冊もないと知った。意外。浦安には創価学会の立派な施設もあるのに。ありがたいから借りずに買って読めということなのかと思ったら…

宮下隆二『イーハトーブと満州国 宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』

イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷 作者:宮下 隆二 メディア: 単行本 法華経を絶対視して『立正安国論』で仏教的ユートピアを唱えた日蓮を信奉する宗教団体・国柱会にそれぞれ入信していた宮沢賢治と石原莞爾。詩人・作家・教員の宮沢…

大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研! TWENTY TWENTY』

ジャニ研! Twenty Twenty ジャニーズ研究部 作者:大谷 能生,速水 健朗,矢野 利裕 発売日: 2020/06/23 メディア: 単行本(ソフトカバー) 本日発売のジャニーズ研究部『ジャニ研! TWENTY TWENTY』。大谷能生・速水健朗・矢野利裕の鼎談は、ネット解禁したジ…

「文蔵」7・8、「小説現代」6&7の合併号

文蔵 2020.7・8 発売日: 2020/06/23 メディア: Kindle版 「文蔵」最新号の特集「「医療小説」の進化を追え!」。「危機の現代こそ読むべき名作15選」(末國善己)が、新型コロナの話題から始めて奈良時代の天然痘流行を描いた澤田瞳子『火定』へと一気に昔…

「小説トリッパー」25周年

小説 TRIPPER (トリッパー) 2020年 夏号【創刊25周年記念号】 [雑誌] 発売日: 2020/06/18 メディア: 雑誌 創刊25周年なのね。先日、リアルサウンドに寄せたJ文学回顧(下記↓)は、同誌2000夏季号に書いた清涼院流水論「POSシステム上に出現した「J」」で“J”…

「J」

私は2000年に「POSシステム上に出現した『J』」と題した清涼院流水論を「小説トリッパー」に寄稿して、それが評論家としてのステップボードになったのだった。 「J」とは清涼院のJDCシリーズの「J」であるだけでなく、もちろんJポップやJ文学など、当時のや…

『タワーリング・インフェルノ』

#30DayFilmChallenge DAY 7 a film that you will never get tierd of 初めて劇場で観た洋画。閉鎖空間で人々が右往左往する様子に引きつけられる。 https://www.youtube.com/watch?v=Kr6l87i9oAI 私のディストピアへのこだわりと『タワーリング・インフェル…

『ディストピア・フィクション論』発売一周年

ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力 作者:都司昭, 円堂 発売日: 2019/04/27 メディア: 単行本 昨年の今日、『ディストピア・フィクション論 悪夢の現実と対峙する想像力』を発売したのだが、1年後に現実世界がここまでディストピア…

遠藤周作『沈黙』

遠藤周作と探偵小説: 痕跡と追跡の文学 (南山大学学術叢書) 作者:承哲, 金 発売日: 2019/03/27 メディア: 単行本 金承哲『痕跡と追跡の文学』読了。遠藤のキリスト教文学が、探偵小説の手法をいかにとり入れていたかを論じている。まどろっこしい記述に難は…