- アーティスト: ロバート・フリップ
- 出版社/メーカー: WHDエンタテインメント
- 発売日: 2006/05/24
- メディア: CD
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別ミックス、未発表ヴァーション多数を収録した完全版。嬉しいのは、別ヴォーカリストによるヴァージョンが聞けること。
79年オリジナル版では、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのピーター・ハミルが最も多くの曲を歌っていたほか、まだ「元ジェネシス」の肩書きが目立っていたピーター・ガブリエルも1曲(名曲!〈ヒア・カムズ・ザ・フラッド〉)参加していた。だから、キング・クリムゾンのギタリストによる70年代プログレの残り香――という風に、アルバム全体が見えがちだった。
ところが、この完全版で聞けるように、本当は最初、ホール&オーツのダリル・ホールに大部分を歌わせレコーディングしていたのだった。また、ブロンディのデボラ・ハリーに一部歌わせる計画だってあった。(次のソロ作《ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン》でトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンをゲストに招いたこともそうだが)フリップとしてはあの頃、若々しくアメリカンなポップ(+ニューウェイヴ+エクスペリメンタル)を目指していたのだろう。しかし、商業的なしがらみにより、ハリーは不参加、ホールの参加は縮小。思うように作らせてもらえなかった、と。
だから、《ディシプリン》(81年)で再結成したクリムゾンが、思いっきりアメリカン・ニューウェイヴなエイドリアン・ブリューを起用したことについては、《エクスポージャー》に伏線があったのだ。実際、《エクスポージャー》でホールが歌った〈ノース・スター〉なんて、聞き返せば《ディシプリン》の〈待ってください〉にサウンドが近いし。
といいつつ、《エクスポージャー》一番の聞きものは、7拍子を中心としたインスト〈ブレスレス〉である。フリップ流ヘヴィメタルとしては、リズムにヒネリがある分、クリムゾン〈レッド〉を超える出来だと思う。特に、ナラダ・マイケル・ウォルデンのドラムがスゴイ。
もし、《エクスポージャー》がフリップの計画通りにまとめられ、アルバムの性格が鮮明になっていたら、ピーター・ガブリエル《III》、デヴィッド・ボウイ《スケアリー・モンスターズ》あたりに通じる、中堅アーティスト版ニューウェイヴになっていたかもしれない。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20060321#p1)