ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

篠山紀信『MAGIC』 / 斎藤環「TDL」の「ヘアヌード」 (ディズニーと労働 2)

篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート MAGICNUDE by KISHIN美術手帖 2009年 04月号 [雑誌]
篠山紀信『NUDE』特集だった先月号の「美術手帖」で、斎藤環が[「TDL」の「ヘアヌード」]と題した論評を寄せていた。客のいなくなったテーマパーク内でキャラクターたちを激写した写真集『MAGIC 篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート』に触れて斎藤はこう書いていた。

『MAGIC』には、いくつもの発見がある。なかでも最大のものは「テーマパークは観客のまなざしを『着る』ことでファンタジーとして完結していたという事実だ。無人のテーマパークは、いままで誰もみたことがないほど生々しいフルヌードを、篠山のカメラの前に存分にさらけ出している。その姿は、意外なほど脆弱で繊細だ。

ディズニーリゾートにおける“ゲスト−キャスト”の関係を、斎藤は“まなざしを『着る』”と表現したわけである。『MAGIC』では、客のいない園内でのキャラクター同士のデート現場が写真になっている。ディズニーリゾートのなかには、白雪姫と王子のように、着ぐるみではなく生身の人間が演じるキャラクターもいる。彼らの逢瀬の写真には、斎藤のいう「生々しい」感じが確かにある。それを見た直後に、ミッキーとミニーのデート写真を見れば、なるほど「ヘアヌード」っぽく思えなくもない。


ここで思い出すのは、2年前のディズニー・キャラクター乱交動画流出騒動である。
http://blog.goo.ne.jp/shadyjpn/e/9997efb23b77eccb03bb56d1196d2974
ディズニーリゾート・パリの従業員が、キャラクターに扮したまま性行為の真似をした画像が世界中に流れたのだ。これなどは、ゲストの「まなざし」を脱ぎ捨てた「フルヌード」だった。
この下品な一件を知っていたから、お上品にまとめられた紀信『MAGIC』が「ヘアヌード」だといわれても、無修正映像のあとにモザイクあり映像を見せられたような、微妙な脱力感を覚える面があるのは否めない。
残念。狙い目はよかったけど、一足遅かったよ、紀信&環。


ゲストの「まなざし」を脱ぎ捨てたという意味では、昨年、本家ディズニーランドの労働者たちがキャラクターに扮してデモを行ったところ、逮捕されてしまった出来事も記憶に残っている。これもべつの意味で生々しかった。
http://labaq.com/archives/51081662.html
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20080819#p1