(「小説宝石8月号」)
同号で官能小説特集をやっていて、大御所3人の旧作が再録されている。
宇能鴻一郎「花くらべ」
川上宗薫「女の魔性」
富島健夫「おさななじみ」
もう、みんな、いかにもな題名である。
で、やっぱり宇能先生は引用したくなってしまう。
書き出しだけ。
あたしって、どうしたらいいのかしら。
二階に学生さんを下宿させたときは、こんなことになるなんて、思いもしなかった。
いえ、ウソなんです。
これが新井素子に多大な影響を与え、ラノベ文体のルーツともなった宇能魔術である(←ありふれたウソ)。
今号の官能小説特集では、もちろん新作も寄せられており、神崎京介、森奈津子が書いているが、凄かったのは大石直紀の短編。
ビシッ――
乾いた音が頭上で響いた。
ビシッ――
パソコンのキーボードから指を離し、天井を仰ぎ見る。
音は確かに上から聞こえてくる。
ビシッ――
書き出しがこれで、タイトルは「階上の女」。女がああもしているのか、こうもされているのか、と妄想は膨らむ。しかし、官能小説らしからぬ展開をみせるのだ、この短編は。書いた大石も偉いが、特集に配置した編集部も偉い。
- 最近自分が書いたもの
- 「秋葉原通り魔事件以後に『1Q84』を読むということ」 → 『村上春樹『1Q84』をどう読むか』asin:4309019331
デヴィッド・ボウイから好きな曲を5つ選ぶなら、<1984〉も入れるな、僕は。
- 22日夜の献立
アベフトシ死去。
幕張メッセで見たミッシェル・ガン・エレファント、かっこよかったな……。