『村上春樹「1Q84」をどう読むか』では越川芳明など数名が、エルサレム賞授賞式での春樹のスピーチに言及していた。春樹が、イスラエルで「壁と卵」の話をした例のアレだ。たとえ、彼がどう考えていたにせよ、実際イスラエルに行きスピーチしたこと自体、政治的に利用されたのだ――という批判はつきまとう。
一方、『1Q84』には、ヒロインの青豆がクイーンとアバは最悪だと思う場面があった。で、春樹スピーチ批判のあれこれを読んで思い出したのが、クイーンにとっての1984年。
同年10月、クイーンは、人種差別政策をとっていた南アフリカのサンシティで公演を行い、そのことで国際的な非難を浴びた。当時の音楽界では、南アでライヴすべきでないという考えかたが一般的だったからだ。これに対しクイーンのメンバーは、人種差別に加担する意図はなく、現地ミュージシャンと交流もした――などと釈明したが、南アで演奏したこと自体が問題視され、英国の音楽家組合に罰金を払うはめになった。
つまり、1984年のクイーンを揶揄して書く春樹自身が、スピーチの件で、1984年のクイーンみたいに批判されているわけである。なんとも皮肉な図式だな――と思った。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20090605#p1)
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20090702#p1)