(訂正:東浩紀×法月綸太郎対談が載るのは、『郵便的不安たちβ』ではなく、『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』(河出文庫。3月発売)のほうでした。どうもすいません)
第11回本格ミステリ大賞候補作が決定した。
- 【小説部門】
- 【評論/研究部門】
今回の特徴は、本格ミステリというジャンルに関する形式化の問題=ミステリにおけるゲーデル問題=後期クイーン的問題−−を扱った作品が多いこと。『綺想宮殺人事件』、『エラリー・クイーン論』、『現代本格ミステリの研究』は直接、同問題を扱っているし、『隻眼の少女』もその種の作例だとみられている。
一方、「東浩紀アーカイブス2」として3月に刊行される『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』には、『不過視なものの世界』(2000年)に入っていた東×法月綸太郎対談も追加収録されるという(本体である「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」という論考のほうは、2007年に刊行された講談社BOXの『情報環境論集 東浩紀コレクションS』にも収録されていた)。
同対談は、ミステリにおける形式化問題を言いだした当人である法月が、このテーマについて東と話した部分も含んでいる。したがって、なぜか後期クイーン的問題のぷちリヴァイヴァルが来ている今、東×法月対談がもう一度、日の目を見るには、いいタイミングではなかろうか。
サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2 (河出文庫)
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/03/04
- メディア: 文庫
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90年代に法月綸太郎は、柄谷行人『隠喩としての建築』(単行本オリジナル1983年。なかでも、特に「形式化の諸問題」)を参照しつつ、ミステリにおけるゲーデル問題を論じだした。柄谷の同書では建築家クリストファー・アレグザンダーへの言及がひとつのポイントになっていたが、最近はアレグザンダーに関しても「思想地図β」創刊号のパターン・サイエンス特集のように再注目されている。
また、高橋昌一郎『理性の限界』、ジェイムズ・D・スタイン『不可能、不確定、不完全』など、近年、ゲーデル関連の本がけっこう出ている。
今のミステリ界が思想・批評のような外部の動きを特に意識しているとは思えないが、後期クイーン的問題のぷちリヴァイヴァルは、結果的にそれらと共振する動きになっている。この点は興味深いし、機会があればいずれどこかでじっくり論じたい。
(抽象的に予告だけしておくと、僕はミステリの形式化問題について『隠喩としての建築』→『探求』の時の柄谷みたいに「態度の変更」をしてもいいでしょう、もう議論のアングルを変えてもいいでしょうと考えている)