ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『エンタメ小説進化論』をめぐるあれこれ

エンタメ小説進化論 “今”が読める作品案内
『エンタメ小説進化論』では『何者』で直木賞を受賞した朝井リョウの『少女は卒業しない』も論じた。同書所収「四拍子をもう一度」では軽音部のヴィジュアル系エアバンドが出番前に化粧道具・衣裳・音源を奪われ…。『ソーシャル化する音楽』の観点からも面白い話である。


本書ではEXILEも話題にした。そこでは、世代継承を一つのテーマに掲げたこの一族にとって、家長HIROのパフォーマンスからの撤退のしかたが重要だということも書いたのだが、意外に早く現実化したなという印象である。


『エンタメ小説進化論』ではAKB48EXILEレディー・ガガニコニコ動画といった事象を同時代の小説と絡めて、また『ディズニーの隣の風景』では今や日本の音楽風景を語る際に欠かせないYOSAKOIについて、それぞれ論じている。
『ソーシャル化する音楽』を読んだかたには、ついでにぜひ読んでいただきたい。


この際だからアーバンギャルドファン向けに書いておくと、『ガイガーカウンターカルチャー』に推薦文を寄せた作家・辻村深月の傑作中二病小説『オーダーメイド殺人クラブ』を論じた原稿も収録されている。


三浦しをん舟を編む』で、駅ホームの人々がエスカレーターに整列していく流れの美しさが語られていたことは、『エンタメ小説進化論』で言及した。一方、村上春樹色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』352Pの駅の場面を読み、この主人公は“駅を編む”だな、と思った。


綿矢りさはスランプだった頃、百貨店で服を売っていたという。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130419-00000366-playboyz-soci
本書で論じた『かわいそうだね?』の表題作におけるヒロインの設定には、その経験が活かされているのかもしれない。


『エンタメ小説進化論』では、伊坂幸太郎『マリアビートル』、新城カズマ15×24』も論じた。一方、「小説宝石」5月号の新刊書評では、伊坂『ガソリン生活』、新城『tokyo404』をとりあげた。
『マリアビートル』では乗り物が主人公である「きかんしゃトーマス」が話題にされていたが、『ガソリン生活』では自動車が語り手となっている。また『15×24』は街を駆け回る都市論的な作品だったのに対し、『tokyo404』も非定住者たちに焦点を当てた都市論的な内容である。