ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「小説現代」8月号でブルース、ユーミン、『ラバー・ソウル』

小説現代 2013年 08月号 [雑誌]

小説現代 2013年 08月号 [雑誌]

小説現代」8月号をめくると、五木寛之&北方謙三対談ではブルースについて語られ、連載に関しても酒井順子のエッセイがユーミンをとりあげ、中山康樹による『ラバー・ソウル』時代のロック考察に至っては書き手も内容も完全に音楽雑誌の範疇だ。小説誌にしては、わりと音楽比率が高い。

一方、同号掲載小説のなかには、吉川トリコ「日曜日はヴィレッジ・ヴァンガードで」がある。同作において”「本も置いてある雑貨屋」状態”と説明されるヴィレヴァンを裏返したかのごとく、地味な文芸誌をもう少し楽しげにしようとした時には、音楽のことも載っている雑貨屋的ラインナップが、昔からしばしば選ばれてきた。
小説現代」のこの号はまだ控えめだが、「パピルス」などは音楽の比重が大きいのがむしろ普通だ(ルーツはかつての「月刊カドカワ」だろう)。
(「小説現代」同号もそうだが多くの文芸誌の音楽特集が読者層にあわせて中高年向けになりがちなのに対し、「パピルス」はそれよりは若い層をターゲットにしているのも特徴)。
とはいえ、音楽分野をとりこんだ文芸誌のその種の雑貨屋状態は、ヴィレヴァンの店内ほど迷宮化しないのが通例だし、もっと整理されている。その意味では、文芸誌のTSUTAYA的編集と呼んだほうがよいかもしれない。