- 作者: いとうせいこう
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/03/02
- メディア: ハードカバー
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異界との交信、聞き分ける耳、鋭敏な感覚を持つ子ども、魂の居場所としての樹木、核時代の想像力、方舟――などのモチーフに関して、いとうせいこう『想像ラジオ』は、大江健三郎の諸作(例えば『洪水はわが魂に及び』)との共通性を指摘できる。本作は、戦後文学を律儀に継承している。
また、東日本大震災をめぐる物語のなかには、チャリティAVを作ろうとする高橋源一郎『恋する原発』、アイドルカルチャーを背景にした宮藤官九郎『あまちゃん』、私家版雑誌の体裁で書かれた大江健三郎『晩年様式集』、そして、いとう『想像ラジオ』といったぐあいに、作品内にメディアを介在させた例が目立つ。それらは、被災当事者のドキュメントではない物語と震災の間にある疎隔感を、メディアの介在を強調した設定によって描こうとしたのだろう。
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- 大江健三郎著『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』の書評 → 「月刊宝島」2014年1月号
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- 石持浅海著『ブック・ジャングル』文庫版に書いた解説、こちらにアップされた。 → http://hon.bunshun.jp/articles/-/2038