ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

QUEEN + ADAM LAMBERT

8月17日 SUMMER SONIC 東京会場 Setlist

S.E. Procession
1.Now I'm Here
2.Stone Cold Crazy
3.Another One Bites the Dust
4.Fat Bottomed Girls
5.In the Lap of the Gods... Revisited
6.Seven Seas of Rhye
7.Killer Queen
8.I Want It All
9.Teo Torriatte (Let Us Cling Together)
10.Love of My Life
11.These Are the Days of Our Lives
12.Under Pressure
13.I Was Born to Love You
14.Radio Ga Ga
15.Crazy Little Thing Called Love
16.Bohemian Rhapsody


Encore
17.We Will Rock You
18.We Are the Champions
S.E. God Save the Queen




遅くなってしまったが、彼らのステージの感想を記しておく。
“Procession”が流れて“Now I'm Here”の演奏でスタートするオープニングは、1975年4月の初来日公演と同じ。
また、サマーソニックも含め、クイーン+アダム・ランバートの最新ツアーのセットリストは、9月に発売されるクイーンの発掘ライヴ『ライヴ・アット・ザ・レインボー '74』を意識したようなところがある。S.E.〜1曲目は、74年11月の公演と同じ始まりかただし、“Stone Cold Crazy”、“In the Lap of the Gods... Revisited”、“Seven Seas of Rhye”、“Killer Queen”も『ライヴ・アット・ザ・レインボー '74』の収録曲だ。
このうち、“In the Lap of the Gods... Revisited”は、初期ライヴでは終盤に観客と合唱するための曲だった。後に同曲の役目は“We Will Rock You”&“We Are the Champions”に置き換わったが、フレディ・マーキュリー最後のツアーとなった86年のセットリストでは、久しぶりに“In the Lap of the Gods... Revisited”が復活していた。
さらに、今回のオープニングでは、まずアダム・ランバートのシルエットがスクリーンに映ったが、76年3月の二回目の来日公演はフレディのシルエットからライヴはスタートしたのだった(当時の最新ヒット曲“Bohemian Rhapsody”のオペラティック・パートの詞が「I see a little silhouetto of a man」から始まることに引っかけた演出)。


このように今回のクイーン+アダム・ランバートは、フレディ存命時からのクイーン・ファンに様々なことを想起させる要素を散りばめつつ、『ライヴ・アット・ザ・レインボー '74』のプロモーションにもなっていた。よくできた内容である。
“Love of My Life”、“Bohemian Rhapsody”では、曲の一部でフレディの映像と歌声が流れ、観客と合唱し、現在のメンバーと共演した。ロジャー・テイラーがリード・ヴォーカルの“These Are the Days of Our Lives”では、今はバンドに参加していないジョン・ディーコンを含め、クイーン4人の回顧映像が流れた。これらの演出は以前、クイーン+ポール・ロジャースのツアーでも行われたもので目新しくはない。だが、その時のツアーと今回では、ステージの印象がまるで違う。
クイーン+ポール・ロジャースのツアーは、ブライアン・メイロジャー・テイラーが作ったクイーン・サウンドと、フレディとまったくタイプの異なるシンガーであるポール・ロジャースがコラボするものだった。クイーンは、メンバー4人全員が曲を書くが、ブルース、ハード・ロックの道を歩んできたポールは、ハード・ロック好きのブライアンの趣味に近いシンガーだった。このため、フレディ作のポップな曲は、あまり演奏されなかった。
一方、アダム・ランバートは、ポップ志向のアーティストであり、クイーンとのツアーではフレディ作の曲をポールよりも多く歌っている。クイーン+ポールの来日公演では、ブライアンのアコギだけで彼とロジャーが、この国での人気曲“I Was Born to Love You”を歌い、ポールはそこに加わらなかった。それに対し今回は、バンド演奏でアダムが歌い、同曲を真正面からカヴァーした。ポールとアダムの資質の違いが現われた場面だと感じた。


アダムもすでにソロでキャリアのあるアーティストだし、フレディの真似をしているわけではない。だが、曲本来のイメージを崩さない歌いかたである。スクリーン上のフレディとの共演に関し、ポールは「競演」に見えたのに対し、アダムは「継承」に見えた。
これは、フレディとアダムがいずれもゲイであることとも関係しているだろう。ポップ志向、ユーモア、ゲイ的なノリ、フロントマンとしての華やかさなどの点で、2人は共通の系譜にあるといってよい。
フレディの死後、その追悼コンサートで見事なパフォーマンスを披露したジョージ・マイケルが、クイーンの後任ヴォーカリストになると噂された時期があった。彼も共通の系譜に位置づけられる人だし、クイーン+アダム・ランバートは、ジョージ・マイケル加入説にあった発想、期待の延長線上に成立したプロジェクトだと、私は思っている。
高級娼婦を歌った“Killer Queen”でアダムは、ステージに用意されたソファに扇子を持って寝そべりながら歌った。コンサートの最後では、王冠をかぶった。それらは、バスローブのように羽織った着物を脱いでストリップごっこをしたり、冠をかぶって女王に扮装するなどしたフレディのステージ上でのユーモアを継承している。
また、“Crazy Little Thing Called Love”後奏では、サポート・メンバーのスパイク・エドニーのピアノが主役になるが、フレディはそこに手を伸ばしてコードを叩くことをよくしていた。今回のサポートもスパイクだったが、ブライアンとアダムの2人で手を出してコードを弾いていた。


ポールの場合、ハード・ロック路線だっただけでなく、自分が在籍したフリー、バッド・カンパニーの曲も歌った。このため、クイーン本来のステージとは路線の異なるセットリストになっていた。一方、アダムはこのツアーで自分のソロ曲を歌うことなく、クイーンのヴォーカリストという役を演じきっている。クイーン+ポール・ロジャースの競演とは違い、まるごとクイーンなステージとして構成されている。このため、往年のクイーン・ファンを喜ばせるものになっていたし、新しいリスナーにとってもクイーン存命時のライヴを想像しやすい内容だっただろう。
フェスということでツアーの平均的セットリストよりは時間が短く、東京会場はサマソニ大阪よりもさらに曲数が少なかった。一番好きな“Somebody to Love”が聴けなかったのは残念だが、コンパクトなセットリストはその分濃密で満足度は高かった。
このツアーが、DVD化されることを望む。
※2016年追記:その後、DVD化された。めでたしめでたし。





・2005年のクイーン+ポール・ロジャース来日に関して書いた原稿はこちら。 https://note.mu/endingendless

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