ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

大川隆法『ウォルト・ディズニー「感動を与える魔法」の秘密』

死者や守護霊になりかわって他人の思いを本人以上にしゃべくり倒す、大川総裁お得意の公開霊言である。「霊言現象」に関する本書巻頭の説明によると、

外国人霊の霊言の場合には、霊言現象を行う者の言語中枢から、必要な言葉を選び出し、日本語で語ることも可能である。

とある。無敵の設定だ。
本書において大川総裁は、ウォルトになりきる直前の口上でいう。

ただ、英語で霊言を行うと、野暮になって長くなるため、できれば日本語で頑張りたいと思います。東京ディズニーランドを開いている以上、日本語で霊言をする“義務”はあるでしょう。

至れり尽くせりである。
で、宗教家がディズニーの感動や魔法について語るのであれば、夢とか精神とかの話になるのかと思ったら、驚いたことに本書はビジネス書として作られている。

だから、ディズニーランドを研究したら、宗教も流行るよ。

という観点で、幸福の科学の研修をしましたという本なのだ。

外(の気温)が三十四度なら、着ぐるみのなかは、六十度ぐらいの温度だよ。(略)だから、下はねえ、まあ、こんなこと言っちゃ、女性に失礼だけど、もうパンツ一つしか穿いてないのよ。(略)それで、パンツ一つで着ぐるみを着て、ミッキーになり切ってるわけよ。

えらく現実的である。
そして、ウォルト=大川総裁は、感動には四つの段階があると語り(番号を付けて順番に説明するあたり、いかにもビジネス書っぽい)、宗教もディズニーのようなリピーター獲得が成功の秘訣だと熱弁をふるう。


ウォルト=大川総裁は、

まあ、私的には、従業員一人ひとりを、魔法使いに変えてるつもりなのよ。

と語る。このセリフは、宗教−自己啓発−やりがい搾取の親近性を連想させるものになっていないか。幸福の科学とディズニーランドに共通したノリともいえる。
公開霊言というトリッキーすぎる手法ではあるけれど、ディズニーのアナザーサイドをなにがしか反映している部分はあるな、と思わせる妙な本ではある。決して、お薦めはしないが。