江藤淳『成熟と喪失 “母”の崩壊』

成熟と喪失 “母”の崩壊 (講談社文芸文庫)

成熟と喪失 “母”の崩壊 (講談社文芸文庫)

進行中の単行本書下ろしの参考のためにとめくった江藤淳『成熟と喪失』を結局、再読。67年にまとまった同書は「治者」になれない日本の男ってテーマを含んでいるが、選挙当日に読んで、今でもまともな「治者」はいないと思うのだった。
江藤は、敗戦によって「アメリカ=父」が「日本的自然=母」を崩壊に至らせ、占領終了後に米軍が引き上げてからも国内に「治者=父」が誕生していないという日本の心理状況を、第三の新人の諸作から読みとっていた。
戦後から今に至る日米関係において「アメリカ=父」は実態として「治者」であり続けており、日本が同国を上回る「治者」になることは禁じられているともいえる。なのになお、強い「治者」足らんと力むところに歪みが生じる。
その意味で、普天間基地移設問題で迷走した鳩山民主、中韓に強情を張っても米国には張れない安倍自民は、裏表の関係だろう。

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2015本格ミステリベスト10本の雑誌379号

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