昨日、ようやく、『君の名は。』を観てきた。『シン・ゴジラ』と同じ年に公開された同作。『シン・ゴジラ』が東日本大震災&原発事故をあからさまに意識した映画だったのと同様に、『君の名は。』も「災後」を意識した映画だった。
いずれも後半では、危機回避のための政治的決断が焦点になる。『シン・ゴジラ』では国内政治に関しては手続きが、外交に関しては根回しと駆け引きが描かれる。なるべく現実をシミュレートしようとした内容だからそうなる。
これに対し、『君の名は。』で小さな地方自治体の長を動かすのは、超常現象の体験をもとにした娘による説得だ。しかも、長である父と娘が再度対面した瞬間に画面は切り替わり、彼女が具体的にどう説得したかは映されない。そのへんは、曖昧なままだ。
人間の知恵の勝利を語りつつ母国の内政と外交の危うい現状を反芻する『シン・ゴジラ』より、奇跡と情によって危機が回避される『君の名は。』のほうが、より広範な人気を得たのは当たり前。現実より夢のほうが、飲み込みやすいんだから。
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