ディズニーアニメに代表されるように、主人公たちが危機的状況に陥るが、真実の愛のキスによって奇跡が起きるという物語の定番がある。死から蘇るというのが奇跡の典型であり、それはキスが息を吹き込む=命を吹き込むことを暗示する象徴的な行為だからだろう。逆に、命を吸いとるという意味で、キスが死と結びついている物語もある。『ウンディーネ』、『サロメ』、『エリザベート』などがそう。
『君の名は。』の場合、男女の心が入れ替わり、しかも二人がすれ違い続ける物語になっている。途中で対面する場面はあるものの、ほんのわずかな時間でしかない。また、最後に再会したとたん、物語は終わる。この映画にキス・シーンはない。
しかし、それに相当するシーンはある。瀧が三葉の口噛み酒を飲むシーンだ。その行為によって彼は、死んだはずの三葉と会うきっかけをうる。神事として三葉が作った口噛み酒は、物語展開における働きとして、真実の愛のキスを代替するものとなっている。
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- 『バンド臨終図巻』の文庫版、刊行されました↓
- 作者: 速水健朗,円堂都司昭,栗原裕一郎,大山くまお,成松哲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/12/01
- メディア: 文庫
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