ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『シン・ゴジラ』

ブルーレイ3枚組を買った。

私もこの映画のエキストラに参加して、本編に後頭部だけ映っている。いわゆる蒲田くんの上陸を、ビルの屋上から見物しているサラリーマンたちのなかの一人である。
撮影の時は、あっちの方向にゴジラがいますと状況を説明されただけで、普通のゴジラがいる設定だと思っていたから、映画館で蒲田くんを見た時にはビックリした。あんな気持ち悪い形状だと知ってたら、もっと違うリアクションしてたよ……。


その撮影の時のこと。
私たち見物人役のエキストラが集まったビルとゴジラがいる設定の遠方との間には、当然、ビルがたくさん建っている。そのうちの一つの、ちょっと離れたビルの屋上で、おばさんが洗濯物をほし始めた。カメラの角度からして彼女は映りこんでしまう位置だから、撮影は中断された。彼女の作業が終わるまで、待ち時間になった。
ところが、おばさんは、こちらのビルに大勢集まっていることに気づき、「なにかしら?」と怪訝そうな態度になり、手を動かすのを止めてしまう。こちらの関係者が早く終わらせてくれないかなとじれったく思っても、おばさんはなかなか期待するようには動いてくれない。
みんな、笑うしかない。あれは、滑稽な時間だった。
で、思った。怪獣が上陸するような非常時でも、洗濯ものをほす人はいるんじゃないかな、と。事態を甘くみているとか、怖いからこそ繰り返しの日常に逃げるとか、どんな状況でも汚れ物をそのままにしたくないのよとか、いろんな感覚の人がいるわけだから。
もし、洗濯物をほしている最中、怪獣が間近に迫っていることにおばさんが気づいたらどんな反応を見せただろう? とブルーレイを見てあれこれ想像してしまった。

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