ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『日本沈没2020』

日本沈没2020』については、ここ↓に書いた。

-日本沈没2020』は何を描いたのか? 賛否呼んだ同作の狙いを、原作との比較から考察 https://realsound.jp/book/2020/08/post-599671.html

 このサイトにしては長い原稿になったので削った要素もある。そのいくつかを雑記。

 

 原稿で触れた通り『日本沈没2020』には、2006年映画版や小松左京谷甲州日本沈没 第二部』の要素をとりこんだところがある。かつてスティーヴン・キングは自作のホラー小説『シャイニング』を映画化したスタンリー・キューブリック監督の改変を痛烈に批判した。それに対し、キングが執筆した続編『ドクター・スリープ』を映画化したマイク・フラナガン監督は、『シャイニング』の小説版と映画版の要素をいずれもとりこみ、融合させる離れ業をみせた。その域まではとても達していないが、『日本沈没2020』にも融合に関するチャレンジがみられた。

 

 また、すでに指摘されている通り、『日本沈没2020』の家族の状況設定は『サバイバルファミリー』(2017年)に近い。なぜかあらゆる電気が使えなくなり、ライフラインが途絶し都市機能が麻痺した東京から、噂から西のほうに希望があると期待して必死に旅する一家の映画だ。

 一方、歩の母が水中で頑張るシーンは、津波による転覆で上下逆になった豪華客船に閉じこめられるパニック映画『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)のあるエピソードを思い出させる。

日本沈没2020』には、災害フィクションの定跡をたどったような部分がちらほらみられる。

 例えば、母の乗った飛行機が海底噴火の影響(アニメでは機体が受けた衝撃と揺れしか表現されないが、ノベライズでは噴石の衝突が書かれている)で川に不時着するが、『日本沈没』2006年版映画では首相の乗った飛行機に火山弾が当たり墜落していた。

 

 

最近の自分の仕事

-尾崎世界観が語る、人からの影響とコロナ禍の音楽活動「今はいらないものに気づく時間」(文・取材)https://realsound.jp/book/2020/07/post-590333.html