ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「死刑囚表現展2020」

「死刑囚表現展2020」に行ってきた。「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」主催となっているが、植松聖や加藤智大の自意識誇示の“作品”をみせるのは、廃止運動にむしろ逆効果な気が……。それにしても、ポケモンの絵を真似て「死刑廃止Getだぜ!」とか、絞首刑の輪縄の前にいる少年を描いて「MajiでTsuraれる5秒前」とフレーズ入れてる山田浩二、吊られた絵も出品しているし……印象強かった。

 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』には、クローンの少年少女たちが心を有した人間であることを証明するため、彼らの手による絵や工作を提出させるという話が出てきた。死刑反対の文脈で催されているこの展覧会も、死刑囚の人間性を伝えたいということなのだろう。とはいえ、そのコンセプトを弄んで鑑賞者をからかおうとするような“作品”も散見されて、彼らをどうとらえればいいのかよくわからない。

 悪ふざけなのか、死への恐怖で心が不安定なのか、社会への敵対心か。そこらへんが気になるものの、出品者一人ひとりがどんな罪を犯したのか、刑務所で最近はどんな生活ぶりなのか、精神状態は、といった周辺情報はない。かといって、周辺情報に関係なく作品自体を鑑賞せよというのも違うだろう。死刑囚だからここへ出品できるという前提がまず明らかなのだから、その肩書抜きで観るのは不可能だ。

 なんとも、もやもやする催しであった。

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