村上龍『希望の国のエクソダス』(2000年)再読。同作では80万人に増えた不登校中学生の代表格である少年が、ネット中継の形で国会に招致される。だが、議員たちは弁舌や理屈で彼に太刀打ちできず沈黙してしまう。建前を棒読みすることすら覚束ない現首相の姿とオーバーラップする場面だった。
村上龍は『ヒュウガ・ウイルス』で強力なウイルスが蔓延した地域に進入する部隊をウイルスに喩えた。一方、『希望の国のエクソダス』では不登校中学生たちの同調の広がりを「伝染」と表現しつつ、規制緩和のビッグバンをウイルスになぞらえ、「市場」はウイルスのごとくどこへでも入りこみ共同体を壊すと書いていた。
コロナ禍でウイルス対策と経済を回すことのバランスがあれこれいわれるが、経済もウイルスみたいなもんだって話だ。
『ヒュウガ・ウイルス』は、生化学的な記述を織り交ぜているくせに、圧倒的な危機感をエネルギーに変える作業を繰り返してきたものだけがウイルスから生還するという精神論に着地して読者を唖然とさせる。でも、雑な行動してる麻生や二階をみると、圧倒的に図々しい精神なら感染しないのではと思えてくる。