ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『密やかな結晶』、こんまり、断捨離

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

 

 いろいろなにかが消滅し、間をおきつつ次々にそれらの記憶がなくなっていく島。消滅したものを思い出せる人は、秘密警察の記憶狩りにあうが、大部分は消滅の進行を受け入れるのがあたりまえになっている。

 小川洋子『密やかな結晶』のそんな物語をめくり返していて思った。ここで描かれた世界はディストピアだと多くの人は思うはずだが、ときめかないものは捨てようと提唱するこんまりメソッドや、断捨離を信奉する人にとってはユートピアなのではないか? 近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』には「リバウンド率ゼロ。一度習えば、二度と散らからない、「こんまり流ときめき整理収納法」」というキャッチフレーズがあったのに対し、『密やかな結晶』では、”一度消滅したら、二度と思い出せなくなる”現象が語られていたのであり、両者は相似形なのだから。

 このことが気になったので、まだ読んだことのなかったこれらの本を借りてみた。

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ときめかないものを所有してから断捨離するのはアホらしいし、図書館ですませるのは当然だろう。

 ちなみに『密やかな結晶』は、しっかり所有しており、手離す予定はない。より多くの人に買われるべきだとも思うので上記のようにリンクを貼った。こんまりについては、貼らない。

 

 

最近の自分の仕事

-遠野遥が語る、異彩を放つ初長編『教育』執筆の背景「小説は小説であってそれ以上でもそれ以下でもない」(構成・取材)https://realsound.jp/book/2022/01/post-931777.html

-『イメージの進行形』要約&レビュー(「ゲンロンサマリーズ」からの再録)https://www.genron-alpha.com/gs072/