「本の雑誌」12月号の英保キリカ「Z世代が読む昭和流行本体験記」では『かもめのジョナサン』リチャード・バック(五木寛之訳、1974年)が「大ヒットを記録するほどの魅力を、私は見出せませんでした」といわれていて、時代性というものを感じた。
『かもめのジョナサン』の原著はアメリカで1970年刊。カリスマの栄光と失墜、自己探求、宗教性といった要素は、今ふり返れば、同時代にヒットしたザ・フー『トミー』、ミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』などと共通する。なかでもコミューンの形成と揺らぎといった展開が、この時代らしいと思う。