ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『ドラマチック・リーディング 新宿八犬伝 第一巻 犬の誕生』

 22日昼、space早稲田で『ドラマチック・リーディング 新宿八犬伝 第一巻 犬の誕生』を観てきた。

 作・川村毅

 演出・小林七緒(流山児★事務所)

 音楽・諏訪創

https://stage.corich.jp/stage/394529

「ドラマチック・リーディング」と銘打たれていたから、朗読劇を想像していたが、ちょっと違った。確かに役者が、持った台本を読みながら演技したりする。二つのグループが敵味方で左右に分かれ、その間に置かれた衝立に書かれた台本をそれぞれ読みあう場面もある。

 だが、とても読めるとは思えない小さな台本を手にしたり、台本を小道具として使うなど、読まずに演技する時間もかなりある。また、台本を持たないまま動く役者もいる。

 一方、この芝居には、「影の滝沢馬琴」が筆で物語を書いている姿が、たびたび挿入される。つまり、作者と、その人が書く物語のなかにいる登場人物の関係を、書いている「影の滝沢馬琴」と読んでいる登場人物という形で表現したのだろう。「ドラマチック・リーディング」であると同時に“ドラマチック・ライティング”でもある演出なのだなと思った。

「影の滝沢馬琴」が登場するくらいだから、川村毅脚本の『新宿八犬伝』は曲亭馬琴南総里見八犬伝』に着想を得ているわけだが、この芝居では「肉体の忍法」がキーワードになっている。また、勧善懲悪をテーマとした馬琴原作では、八犬士の持つ珠に、仁義礼智忠信孝悌という八つの徳の文字がそれぞれ浮かぶ。それに対し『新宿八犬伝』の珠の文字は、騒乱情痴遊戯性愛という、新宿歌舞伎町を舞台にした話らしい猥雑な意味に置き換えられている。これは、八犬士の子孫が、忠孝悌仁義礼智信の珠を、淫戯乱盗狂惑悦弄の字の偽珠へとすり替えられてしまい、本物を取り戻そうと奮闘する山田風太郎忍法八犬伝』を連想させるではないか。八つの徳を猥雑な悪徳へ反転させる発想や忍法のモチーフが、二作で共通している。さらに、『新宿八犬伝』では、風俗嬢四人とホスト四人が対立しつつ、彼らが八犬士となる。それは『忍法八犬伝』の、くノ一八人衆対八犬士という男女対立図式を受け継いだ設定のように思える。

八犬伝』のアダプテーションとしていろいろひねりがあって、面白かった。

 

 

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