ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『新八犬伝』

 近石真介死去のニュースを知る。

https://www.oricon.co.jp/news/2252456/full/

 

 子どもの頃、テレビが壊れ、映らないけど音声だけ聞こえる状態になったことがあった。その期間の夕方、たまたまチャンネルをあわせ、音だけなのに引きこまれたのが、NHK人形劇『新八犬伝』だった。すでに序盤の伏姫のエピソードは終わっており、ストーリーの途中からだったのに、面白く聞けたのだ。語り手だった坂本九の上手さゆえだったと思うけど、あの時の犬塚信乃の声が近石真介だったことを思い出す。テレビが修理されて以後は熱中して見ていて、最終回はラジカセで録音した。

 

 

ほかにもいろんな番組でも彼の声に接してきた。ありがとうありがとう。

 

 

最近の自分の仕事

-MRCミステリーガイド 書評配信――片岡翔『その殺人、本格ミステリに仕立てます』/矢樹純『残星を抱く』/詠坂雄二『5A73』 → メフィストリーダーズクラブ

-「コラム <今年見たミュージカル映画をめぐって 2> 『シラノ』の美醜 → 「ちくま」9月号

-逸木裕『祝祭の子』レビュー → 「週刊現代」9月24日・10月1日合併号

-芦沢央『夜の道標』、宇野碧『レペゼン母』の書評 → 「小説宝石」10月号

-五十嵐律人『幻告』の書評 → 「ミステリマガジン」11月号

-「コラム <今年見たミュージカル映画をめぐって 3> 『アネット』の子ども → 「ちくま」10月号

-「アフタートーク 著者×編集者」第5回『大鞠家殺人事件』芦辺拓(作家)×古市怜子(東京創元社)の聞き手・構成 → 「ジャーロ」No.84

-「コラム <今年見たミュージカル映画をめぐって 3> 『アネット』の子ども → 「ちくま」10月号

-早川書房「HAYAKAWA FACTORY」担当者が語る、攻めたSFアイテムを生み出し続ける理由(取材・構成)

https://realsound.jp/book/2022/10/post-1142135.html

-『地図と拳』小川哲×『満州アヘンスクワッド』門馬司 特別対談 いま満州を舞台にフィクションを描く意味(取材・構成)

https://realsound.jp/book/2022/10/post-1137304.html

SUMMER SONIC 2022

観たもの

8/20 サバシスター → THE LINDA LINDAS → 渋谷すばる → BLUE ENCOUNT → Awsome City Club → Vaundy → MANESKIN → King Gnu → THE 1975

8/21 新東京 → 羊文学 → 優里 → モノンクル → THE STRUTS →GRIFF → 女王蜂 → milet → MEGAN THEE STALLION → ONE OK ROCK → 岡崎体育 → PRIMAL SCREAM

 

 

最近の自分の仕事

-葉真中顕『ロング・アフタヌーン』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」7月号

-「アフタートーク 著者×担当編集者」第3回「『灼熱』葉真中顕(作家)×西山奈々子(新潮社)」の聞き手・構成 → 「ジャーロ」No.82

日本推理作家協会編『喧騒の夜想曲 白眉編Vol.1 日本最旬ミステリー「ザ・ベスト」』『同Vol.2』それぞれの解説(いずれも編纂委員は西上心太円堂都司昭

安部公房の10冊 揺らぐ自分と社会の輪郭 → 「本の雑誌」7月号

竹本健治選『変格ミステリ傑作選【戦後篇I】』の偏愛コメント

-第22回本格ミステリ大賞全選評 小節部門選評 → 「紙魚の手帖」vol.05

-「紙魚の手帖」神原佳史編集長が語る、ミステリ専門誌からの転換 「M、SF、Fの割合を国外の作品も含めてうまく入るよう」(取材・構成)https://realsound.jp/book/2022/06/post-1049685.html

-「浦安には新しい魚食文化のスタイルが渦巻いている」 鮮魚泉銀三代目・森田釣竿が語る、浦安と魚のディープな魅力(取材・構成)

https://realsound.jp/book/2022/06/post-1061024.html

-「〈今年見たミュージカル映画をめぐって1〉 『ウエスト・サイド・ストーリー』の男女」 → 「ちくま」8月号

-結城真一郎『#真相をお話しします』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」9月号

-「アフタートーク 著者×編集者」第4回『爆弾』呉勝浩(作家)×中谷洋基・落合萌衣(講談社)の聞き手・構成 → 「ジャーロ」No.83

-「本棚が見たい! 9月の書斎」(取材受ける) → 「本の雑誌」9月号

-MRCミステリーガイド 書評配信――呉勝浩『スワン』/月村了衛『欺す衆生』/新川帆立『競争の番人』/阿津川辰海『入れ子細工の夜』/芦辺拓『名探偵は誰だ』/辻真先『馬鹿みたいな話! 昭和36年のミステリ』 → メフィストリーダーズクラブ

-芦沢央、作家生活10年目の問題意識「今の価値観で過去を断罪することは、なんて傲慢なんだろう」(取材・構成)https://realsound.jp/book/2022/08/post-1102849_2.html

BLとSFとロック

 

 

SFマガジン」4月号の特集BLとSFは、BLのルーツ的雑誌「JUNE」に関して、佐川俊彦元編集長インタビュー、同誌の名物企画だった中島梓「小説道場」についての論考(瀬戸夏子)など多くの頁を割いていて、興味深く読んだ。この特集でクローズアップされなかった要素について、個人的な記憶を雑記しておく。

 

 

 私にとって「JUNE」は、ロックとともに記憶されている。1978年に「COMIC JUN」が創刊され、第3号から「JUNE」になったその同時代に発行されていた洋楽ロック雑誌には、実在アーティストをモデルにしたパロディマンガがよく載っていた。そこには、クイーン(初期)、JAPANなどメンバーがメイクしていた人気バンド(←どちらも女性ファンが多かった)が登場し、後にやおい、BLなどと呼ばれることになった要素がギャグとして散りばめられていた。ユニセックスなイメージでは先輩のデヴィッド・ボウイも登場した。

 逆に「JUNE」には、ロックのレコードの広告が入っていたし、本文にも関連したページがあった。今、手元にあるバックナンバーをみると「COMIC JUN」1978年12月号では、裏表紙広告にJAPAN『苦悩の旋律』、折りこみピンナップと特集ページにデヴィッド・ボウイ、「JUNE」1979年2月号の裏表紙広告にデヴィッド・ボウイ『ステージ』とダリル・ホール&ジョン・オーツ『赤い断層』が掲載されていた。

 同時代の「ロッキング・オン」には「JUNE」的なものは是か非かみたいな投稿もあったし、「JUNE」とロックは地続きのカルチャーだった印象がある。当時、少年愛ものを描いていた女性マンガ家にはロック好きだったり、ロックのビジュアルを意識して作画する人が少なくなかったということもある『デヴィッド・ボウイ 無を歌った男』を刊行した田中純氏にインタビューした際、限られた時間のなかで萩尾望都やBLについても聞いたのは、そこらへんを意識してのことだった。https://realsound.jp/book/2021/03/post-730379_2.html

「JUNE」の中心的執筆者だった栗本薫/中島梓は、小説『ぼくらの気持ち』で「JUNE」的な文化圏を題材にしたが、そこにもロックネタが多く出てきた。また、彼女のその方面での初期代表作『真夜中の天使』、『翼あるもの』が、もともとは沢田研二(初めはグループサウンズのスターとして世に認知された)の主演ドラマ『悪魔のようなあいつ』の二次創作として発想され、発展してオリジナルな物語になった経緯もある。

 そうした文化圏のなかで男である私は当時、「JUNE」や少年愛をあつかった少女マンガをどのように読んでいたか。それらで描かれている絵や行為が、「薔薇族」や「さぶ」など本来の男性同性愛をあつかった雑誌のものとばまるで別物だとは認識していた。「JUNE」やその種の少女マンガの“男”は、本当の男、女とは違う別の性に見えた。

 一方、ロックにおけるユニセックスな存在の代表格だったデヴィッド・ボウイは、グラム・ロック時代は自らを宇宙人とキャラクター設定し、その後はSF映画『地球に落ちてきた男』で宇宙人を演じたのだった。そのせいもあって、私はボウイを通して、「JUNE」的な“男”を一種のSF、現実の人間とは違う別世界の存在と受けとめて物語を楽しんだところがある。JAPANもSFやホラーを連想させる曲をしばしば発表していたし、沢田研二テクノポップ化した歌謡曲でなぜかパラシュートを背負ったり(“TOKIO”)、カラーコンタクトを入れてアンドロイド風になったり(“恋のバッド・チューニング”)したこともそうしたSF寄りの印象を強めた。逆に、少年愛を描いた少女マンガ家の多くは、SFやファンタジーも描いていたから、彼女たちによる“男”を異世界のキャラクターとして受け入れやすかったのでもある。

 というわけで、BLとSF、と聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは、ロックなのだった。

 

 

最近の自分の仕事

-「週刊読書人」3/11号恩田陸『愚かな薔薇』評 → 「週刊読書人」3/11号

-「SFマガジン」91年生まれの新編集長・溝口力丸が語る、伝統への挑戦「手の届かない遠さまで未来を求めようとする姿勢が大事」(取材・構成)https://realsound.jp/book/2022/03/post-990420.html

-「アフタートーク 著者×担当編集者」第2回 『マザー・マーダー』矢樹純(作家)×吉田晃子(光文社)の聞き手・構成 → 「ジャーロ」No.81

-麻加朋『青い雪』のレビュー → 「ハヤカワミステリマガジン」5月号

メフィストリーダーズクラブ(MRC) 自分もやってしまうかもしれない『坂の途中の家』(角田光代)/「事件の子ども」『罪の声』(塩田武士)

-矢野利裕が語る、文学と芸能の非対称的な関係性「この人なら許せる、耳を傾けるという関係を作ることがいちばん大事」(構成・取材) https://realsound.jp/book/2022/04/post-1006152.html

KING CRIMSON “Starless” (Tokyo 8th December 2021)

https://www.youtube.com/watch?v=laKt80x0E4k

 キング・クリムゾンの(今のところ)最後のライヴ演奏曲の映像。これを生で観られたのは幸せだった。この曲の中盤で音量が上がっていくとともに照明が赤く赤くなっていく展開は、何度体験してもグッとくるものがあった。高校時代に聴いていた時、部屋に射しこんでいた夕日の色を思い出してしまった。しかも、この映像の日、最後にフリップが1人でステージ前方へ出てきてお辞儀したのだ。区切りを感じた。

『同志少女よ、敵を撃て』と『私はスカーレット』

 

 

 

 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』に関し、「どうして日本人の作家が、海外の話を書かなくてはいけないのか」と直木賞選評に書いた林真理子が、以前、マーガレット・ミッチェル風と共に去りぬ』の新訳を依頼された際、わざわざ一人称の『私はスカーレット』へ書き換えたのはなぜか、日本人の自分にそれが可能で意味があって成立すると思った理由をあらためてたずねてみたい。

 

 

最近の自分の仕事

-逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」3月号

-『清水義範の作文教室』、栗本薫『あなたとワルツを踊りたい』、森脇真末味『おんなのこ物語』のレビュー → 『ハヤカワ文庫JA総解説1500』

-メフィストリーダーズクラブ(MRC) シリアスでも面白い『天空の蜂』(東野圭吾)/手の感覚の生々しさ『OUT』(桐野夏生)/社会や歴史の厚みを書く『レディ・ジョーカー』(高村薫)/少年犯罪を問う『天使のナイフ』(薬丸岳)/本当の「悪人」は誰?『悪人』(吉田修一)/介護の建前と実態『ロスト・ケア』(葉真中顕)

-「メフィスト」小泉直子編集長が語る、定額会員制の読書クラブへの挑戦 「クローズドなサークルを作りたいわけではない」https://realsound.jp/book/2022/02/post-963789.html

-有栖川有栖『捜査線上の夕映え』、方丈貴恵『名探偵に甘美なる死を』の紹介 → 「小説宝石」3月号

https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=104001

藤田直哉編著『ららほら2』

「ららほら2」

「ららほら2」

Amazon

 1月11日発売の藤田直哉編著『ららほら2』(刊行:双子のライオン堂)。私は「第四回 なぜ二〇一〇年代の日本文学はディストピアが主流になったのか」で藤田氏と対談しました。

 

 震災後文学もとりあげた『ディストピア・フィクション論』の著者として呼ばれたと思うのですが、『「謎」の解像度』で書いたミステリとディズニーランドのアナロジー、2011年『ゼロ年代の論点』で語ったネット状況と近年の差、『ディズニーの隣の風景』で触れた震災時の浦安の液状化、『戦後サブカル年代記』で言及した公害問題など、私の著書のテーマを横断した内容を話しました。その意味では、自分の書き手としてのキャラクターがかなり出ているかも。

『密やかな結晶』、こんまり、断捨離

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

 

 いろいろなにかが消滅し、間をおきつつ次々にそれらの記憶がなくなっていく島。消滅したものを思い出せる人は、秘密警察の記憶狩りにあうが、大部分は消滅の進行を受け入れるのがあたりまえになっている。

 小川洋子『密やかな結晶』のそんな物語をめくり返していて思った。ここで描かれた世界はディストピアだと多くの人は思うはずだが、ときめかないものは捨てようと提唱するこんまりメソッドや、断捨離を信奉する人にとってはユートピアなのではないか? 近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』には「リバウンド率ゼロ。一度習えば、二度と散らからない、「こんまり流ときめき整理収納法」」というキャッチフレーズがあったのに対し、『密やかな結晶』では、”一度消滅したら、二度と思い出せなくなる”現象が語られていたのであり、両者は相似形なのだから。

 このことが気になったので、まだ読んだことのなかったこれらの本を借りてみた。

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ときめかないものを所有してから断捨離するのはアホらしいし、図書館ですませるのは当然だろう。

 ちなみに『密やかな結晶』は、しっかり所有しており、手離す予定はない。より多くの人に買われるべきだとも思うので上記のようにリンクを貼った。こんまりについては、貼らない。

 

 

最近の自分の仕事

-遠野遥が語る、異彩を放つ初長編『教育』執筆の背景「小説は小説であってそれ以上でもそれ以下でもない」(構成・取材)https://realsound.jp/book/2022/01/post-931777.html

-『イメージの進行形』要約&レビュー(「ゲンロンサマリーズ」からの再録)https://www.genron-alpha.com/gs072/