本格ミステリ作家クラブ選・編の年鑑ベスト・アンソロジー

 

本格王2019 (講談社文庫)

本格王2019 (講談社文庫)

 

 

 本格ミステリ作家クラブ選・編の年鑑ベスト・アンソロジーの最新刊『本格王2019』が発売された。毎年刊行されるこのベスト・アンソロジーには長いことかかわってきた。

 2001年からノベルス版で刊行が始まり、最初の10年は『本格ミステリ0●』(最後に西暦の下2桁が入る)、2011年からは『ベスト本格ミステリ201●』と題されてきたアンソロジーは、今年から文庫版での刊行に移行しタイトルも『本格王20●●』へと変わった。

 そのうち『本格ミステリ01』には自分の評論「POSシステム上に出現した『J』」が収録されている。『本格ミステリ06』、『本格ミステリ07』、『本格ミステリ08』の3年間は収録作の選考委員の1人となり、解説も書いた。『子ども狼ゼミナール』(『ベスト本格ミステリ2014』の文庫化)でも解説を担当している。

 また、『本格ミステリ06』からは本格ミステリ作家クラブの執行会議メンバーとなりアンソロジー担当を務めた。最初の2年は前任の末國善巳氏の下で動く見習期間だったため本格的にたずさわったのは3年目からだったと思う。なにをするかというと、毎回3名が担当する選考委員に対象となる作品掲載誌を発送すること、作品選考の進行役、選ばれた作家への収録許諾のとりつけ、版元である講談社とのやりとり、印税配分の確認、作家クラブへのアンソロジー関連の報告、ノベルス版の文庫化作業など。

 製作にかかわった本は、以下のものになる。

 

本格ミステリ06』

本格ミステリ07』

本格ミステリ08』

本格ミステリ09』

本格ミステリ10』

『ベスト本格ミステリ2011』

『ベスト本格ミステリ2012』

『ベスト本格ミステリ2013』

『ベスト本格ミステリ2014』

『ベスト本格ミステリ2015』

『ベスト本格ミステリ2016』

『ベスト本格ミステリ2017』

『ベスト本格ミステリ2018』

(いずれも講談社ノベルス

 

 また、以下の文庫版も担当した。

 

『論理学園事件帖』(2003年版の文庫化)

『深夜バス78回転の問題』(2004年版)

『大きな棺の小さな鍵』(2005年版)

『珍しい物語のつくり方』(2006年版)

『法廷ジャックの心理学』(2007年版)

『見えない殺人カード』(2008年版)

『空飛ぶモルグ街の研究』(2009年版)

『凍れる女神の秘密』(2010年版)

『からくり伝言少女』(2011年版)

『探偵の殺される夜』(2012年版)

『墓守刑事の昔語り』(2013年版)

『子ども狼ゼミナール』(2014年版)

『ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選001』(2015年版)

『ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選002』(2016年版)

『ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選003』(2017年版)

『ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選004』(2018年版)

(いずれも講談社文庫) 

 

 このほか、2010年の本格ミステリ作家クラブ10周年記念出版であった『本格ミステリ大賞全選評2001-2010』(光文社)の監修、『ミステリ作家の自分でガイド』(原書房)も担当した。

 

本格ミステリ大賞全選評 2001?2010(第1回?第10回)
 

 

 

ミステリ作家の自分でガイド

ミステリ作家の自分でガイド

 

 

 気づけば13年間でかなりの冊数にかかわっている。そして、『本格王2019』刊行に至ったわけだが、私は同書を最後に執行会議メンバーおよびアンソロジー担当から退任したことをご報告しておく。一人が長期に同じ担当を続けているのはよくないだろうと、数年前から交代を考えていたのである。また、出版環境の厳しさに伴うアンソロジーのリニューアル問題についても、とりあえず次の形が得られた。後任の関根亨氏が、今後のアンソロジー製作を仕切ってくれる。

 

 これまで本格アンソロジーの製作に協力していただいた多くの方々に感謝します。

 

 執行会議とアンソロジー担当は退任したとはいえ、クラブ会員であり続けるし、来年の本格ミステリ作家クラブ20周年にむけて準備していることもある。また、新たな形でこのジャンルとかかわっていきたいと思っている。

矢野利裕『コミック・ソングがJ-POPを作った』からミーコの回想へ

 

コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史 (ele-king books)

コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史 (ele-king books)

 

 

 私が2013年に刊行した『ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』のワーキング・タイトルは「音楽遊び」だった。音楽を論ずるとなると、作品としてのアルバムや曲、パフォーマンスのまとまりとしてのライヴを対象とするのが一般的。でも、ただ聴き取るだけでなく、カラオケ、演奏コピー、ダンスやふりまね、音楽ゲームなど日常の遊びの一部として音楽に興ずる機会も多く、テレビやラジオあるいは商店街などむこうから勝手に音楽が流れてくる環境だってある。それゆえ、生真面目な「聴取」以外に力点を置き、執筆当時に話題だったボーカロイドなどネットでの「音楽遊び」を大きく扱ったのが『ソーシャル化する音楽』だった。

 

ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ

ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ

 

 

 興味の方向性をそうだったから、「新しい・珍しい・奇妙」な音楽が「笑い」とともに受容されてきたとして日本のポピュラー音楽史をたどり直した矢野利裕『コミック・ソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』は面白く読んだ。同書には、生真面目な「聴取」からは思い浮かばない音楽史が綴られており、私が2003年に発表した『YMOコンプレックス』にも言及してくれていた。YMOとタモリの関連を書いた部分だ。

 で、『コミック・ソングがJ-POPを作った』を読んでいる最中、YMO関連でべつに思い出したことがある。それは、新しい音楽がノヴェルティ(=新奇)ソングとして受け入れられ親しまれていくことを主題とし、なかでもリズム(歌謡)の持つ力に注目した同書だから呼び覚まされた思い出だった。

 矢野は、YMOのテクノ・ポップがディスコの影響下から出発したことに触れた部分でこう記している。

 

 実際、一九七〇年代後半から一九八〇年代は、ディスコやテクノのフォーマットを適用するかたちで、安易な楽曲が次々とリリースされていた。映画『未知との遭遇』が流行すれば「未知との遭遇のテーマ」(一九七七年)、インベーダーゲームが流行すれば「ディスコ・スペース・インベーダー」(一九七九年)といった具合だ。

 

 

 実は、私が自分から好き好んで音楽を聴くようになったのは、ちょうどこの時期だった。当時は、NHK FMでやっていた映画音楽の紹介番組(タイトル忘れた)をよく聴いていた。「ロードショー」や「キネマ旬報」といった雑誌をめくり、テレビで流れる映画予告編にわくわくしていたものの、映画館に何度も行けるほどのこづかいはもらっていない。そんな中学生は、サウンドトラックを聴くことで映画の内容を想像していたのだ。

 当時は、クラシック的なオーケストラ編成やジャズ的なビッグ・バンド編成のサントラが主流で、たまにロックといった印象だった。だが、ディスコ・ブームがやって来たのである。

 ビージーズに関してはまず、『小さな恋のメロディ』の主題歌“メロディ・フェア”で知った。だからフォークの印象だったわけだけれど、『サタデー・ナイト・フィーバー』の諸曲を聴いた時にはチャラチャラしたディスコに変身していたからたまげた。また、上記のFM番組では、あのオーケストラの響きが仰々しい『スター・ウォーズ』のテーマとともに、それをディスコにアレンジしたミーコのヴァージョンも流したのだ。これがヒットしたミーコは、『未知との遭遇』などもネタにしていたっけ。

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 一方、その頃の私は、パーソナリティのおしゃべりを主体にしたラジオの深夜放送も聞くようになっていたから、合間に流れる洋楽にも親しみ始めていた。そこではクイーン、キッス、イーグルスなどのロックと並行してディスコ・ミュージックが耳に入ってきた。なかには後に電気グルーヴがサンプリングする“ハロー・ミスター・モンキー”や、“ソウル・ドラキュラ”などコミカルな印象の曲も少なくなかった。ベートーヴェンの重々しいあのフレーズをディスコのちょこまかしたリズムにのせた“運命’76(

A Fifth of Beethoven)”など、ギャグとか感じられなかったし。

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 自分が踊りに行くなどという発想のなかった中学生は、自分の部屋で、ノベルティソングとしてディスコと出会ったのである。ディスコ・アレンジに興味を抱いた私は、その手のパロディ風な曲を求め、リメイク版『キング・コング』のジョン・バリーの音楽を日本で改変した“ソウル・キングコング”なんてシングルも買った(『犬神家の一族』で好きになった大野雄二がやっていたからだ)。

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 というわけで、ミーコ版“スター・ウォーズのテーマ”もコミカルなものと受けとめつつ愛聴した。この曲はSF映画らしく、ところどころに効果音的に電子音が使われていた。そして、数年後にSF活劇風のイメージが与えられたYMO“ライディーン”を初めて聴いた時、ミーコ版“スター・ウォーズのテーマ”みたいだと思ったうえで好きになったのである。YMOメンバーは『スター・ウォーズ』やミーコに触れた発言を残していたし、影響関係はあっただろう。“ライディーン”も一つのきっかけとなり、私はテクノ・ポップにハマっていった。

 

YMOコンプレックス

YMOコンプレックス

 

 

「新しい・珍しい・奇妙」な、「笑い」を伴う新しい音楽に悦びを見出していく。中学から高校の時期は、本当にそういう聴きかたをしていたなぁと『コミック・ソングがJ-POPを作った』を読んで思い出したのだった。入口に「笑い」がなかったら、ここまで音楽を聴いていなかったかもしれない。

 

 

最近の自分の仕事

・下村敦史著『フェイク・ボーダー 難民調査官』(文庫化で『難民調査官』を改題)の巻末解説

絶対合格!キスエクと学ぶ「夏のプログレッシブロック強化講座」

『意味も知らずにプログレを語るなかれ』刊行記念のイベントをやります。

 

7月31日(水曜日)

夏を制するものはプログレを制する!円堂都司昭『意味も知らずにプログレを語るなかれ』刊行記念~絶対合格!キスエクと学ぶ「夏のプログレッシブロック強化講座」

 

出演は私=円堂都司昭と、

 

【出演】
円堂都司昭(ライター/文芸評論家)

【ゲスト】
楠芽瑠(xoxo(Kiss&Hug) EXTREME)
一色萌(xoxo(Kiss&Hug) EXTREME)
高木大地(金属恵比須)

【進行】
成松哲(フリーライター

 

詳細はこちら。

http://pundit.jp/events/4229/?fbclid=IwAR14rJL3PRfEiZa4PQ6vxDKS5VIizSr_kPfyvk7QyaQ8wDizQym7_BKJvls

 

よろしくお願いします。

 

意味も知らずにプログレを語るなかれ

意味も知らずにプログレを語るなかれ

 

 

 

 

最近の自分の仕事

・今村昌弘『魔眼の匣の殺人』の書評 → 「小説トリッパー」2019年夏号

・「夜明けの紅い音楽箱」(今回とりあげたのは恩田陸『月の裏側』)、第19回本格ミステリ大賞小説部門&評論・研究部門選評 →「ジャーロ」No.68

・ユーディト・W・タシュラー『国語教師』の書評 → 「モノマスター」8月号

・宮内悠介『偶然の聖地』、矢野利裕『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』の紹介 → 「小説宝石」7月号 https://www.bookbang.jp/review/article/571501

近刊予告『意味も知らずにプログレを語るなかれ』

 

 

意味も知らずにプログレを語るなかれ

意味も知らずにプログレを語るなかれ

 

意味も知らずにプログレを語るなかれ|商品一覧|リットーミュージック

 

 有名洋楽曲を歌詞の方面から読み解く『意味も知らずに〜』シリーズの第4弾は、プログレッシブ・ロックがテーマ。

 

収録予定曲(全24曲)

ピンク・フロイド

「Arnold Layne」

Eclipse

「Wish You Were Here」

「Another Brick In The Wall Part II)」

キング・クリムゾン

「21st Century Schizoid Man」

「Epitaph」

「The Letters」

「Starless」

「Elephant Talk

◎イエス

「Roundabout」

「Close To The Edge」

「Soon (from "The Gates of Delirium")」

ジェネシス

「The Musical Box」

「Watchers Of The Skies」

「Cuckoo Cocoon

「Land Of Confusion」

◎エマーソン、レイク&パーマー

「Promenade 2」

Battlefield

「Karn Evil 9-First Impression Part 2」

◎U.K.

「In The Dead Of Night」

 

◎エイジア
「Heat Of The Moment」
◎ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター
「Killer」
ジェスロ・タル
「Thick As A Brick」
◎ザ・ムーディー・ブルース
「The Night-Nights In White Satin」

 

 

『ディストピア・フィクション論』とクイーン

 

 (バンドじゃない方の)クイーン再入門の「ミステリマガジン」7月号。書評欄で松坂健氏がとりあげたなかの1冊に『ディストピア・フィクション論』が。ミステリを話題にした部分があるとはいえ、どちらかといえば「SFマガジン」寄りの内容なのに恐縮です。同書では(バンドの方の)クイーンにも触れています。

 

ディストピア・フィクション論』でなぜクイーン? と思われるかもしれんが、ディストピアSF映画の古典『メトロポリス』の1984年版の主題歌がフレディ・マーキュリーで、その関係からクイーン“RADIO GA GA”MVには同作の映像が使用されていた。

 

 また、それ以上に、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でスルーされた南アフリカ公演騒動が「分断」というディストピア的問題と関わる出来事だったから、『ディストピア・フィクション論』でクイーンをとりあげたのだった。

 

ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力

ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力

 

 

 

最近の自分の仕事

樹木希林の名言集がベストセラーに 演技と実生活に見る、異質なものを同居させる力量 https://realsound.jp/movie/2019/04/post-354221.html

・葉真中顕『Blue(ブルー)』刊行記念インタビュー https://www.bookbang.jp/review/article/566275

劇団四季ミュージカル『キャッツ』、なぜ愛され続ける? 時代を超えて人々の心を打つ楽曲の魅力 https://realsound.jp/2019/05/post-356781.html

・葉真中顕『Blue(ブルー)』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」7月号

 

さやわか『名探偵コナンと平成』

 この作品を考察することで現在における真実をも論じた本書、面白かった。被害者と加害者の男女比率や動機の時期ごとの変化を語った部分など興味深く読んだ。

 

名探偵コナンと平成 (コア新書)

名探偵コナンと平成 (コア新書)

 

 

 

最近の自分の仕事

  • 葉真中顕インタビュー、芦原すなおハムレット殺人事件』、呉勝浩『バッドビート』の書評 → 「小説宝石」5月号
  • 本城雅人『崩壊の森』書評 → 「モノマスター」6月号

最近の自分の仕事