ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

2024-01-01から1年間の記事一覧

ヒカシュー『うわさの人類』

一部でヒカシューが話題だから書くけど、『物語考 異様な者とのキス』で『フリークス』『エレファント・マン』『グレイテスト・ショーマン』などに触れた部分では、『フリークス』にインスパイアされ制作された『うわさの人類』も念頭にあった。なので本を執…

「ニューミュージックマガジン」と「ビックリハウス」

音楽雑誌と政治の季節: 戦後日本の言論とサブカルチャーの形成過程 作者:山崎 隆広 青弓社 Amazon 「ビックリハウス」と政治関心の戦後史 作者:富永京子 晶文社 Amazon 中村とうようの「(ニュー)ミュージックマガジン」(と吉本隆明の「試行」)をとりあげ…

「坂本龍一の転進」

1/24(金)新宿ROCK CAFE LOFT 配信有 【『坂本龍一語録 教授の音楽と思考の軌跡』刊行記念イベント】 『坂本龍一の転進 アブないラディカリストはスナオになったのか』 出演:円堂都司昭、TVOD(コメカ、パンス) 詳細 https://loft-prj.co.jp/schedule/roc…

安部公房、YMO、セゾン、シンセ

先日行った安部公房展。彼が1973年に演劇へ乗り出した際、西武流通グループ(~セゾングループ)代表・堤清二=小説家・辻井喬の後援があり、安部公房スタジオ第1回公演が渋谷PARCO9階の西武劇場(現・PARCO劇場)だったこと、2人が対談していたことが紹介さ…

「学生運動と小説」

「本の雑誌」12月号の浜本茂「学生運動と小説」では、柴田翔『されどわれらが日々――』、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』など学生運動関連の小説がとりあげられており、その多くに私も触れていた。加えて私は奥浩平『青春の墓標』、高野悦子『二十歳の原点…

『かもめのジョナサン』

「本の雑誌」12月号の英保キリカ「Z世代が読む昭和流行本体験記」では『かもめのジョナサン』リチャード・バック(五木寛之訳、1974年)が「大ヒットを記録するほどの魅力を、私は見出せませんでした」といわれていて、時代性というものを感じた。 かもめの…

1976年

スペクテイター〈53号〉 作者:エディトリアルデパートメント 幻冬舎 Amazon 「SPECTATOR 1976サブカルチャー大爆発」がスポットを当てていたのは『宇宙戦艦ヤマト』、『別冊宝島』、『地球ロマン』、そして『ロックマガジン』とパンク。同特集では特に注目さ…

磯崎新

別冊ele-king 日本の大衆文化はなぜ「終末」を描くのか――漫画、アニメ、音楽に観る「世界の終わり」 (ele-king books) Pヴァイン Amazon 『日本の大衆文化はなぜ「終末」を描くのか』をめくっている。私も同題のようなテーマを『戦後サブカル年代記 日本人が…

安部公房、安部真知、山口果林

(古本)アルキメデスは手を汚さない 小峰元 KO5221 19730828 発行 ノーブランド品 Amazon 「本の雑誌」12月号の泉麻人「深夜ラジオと青春の読書」に、小峰元『アルキメデスは手を汚さない』(1973年)が山口果林主演「女子高校生殺人事件」としてドラマ…

坂本龍一と山川健一の対談

「本の雑誌」12月号の特集は、昭和にスポットを当てた「あの頃、君は読んでいた。」。私も「あの頃」読んでいた。70~80年代を対象にした座談会「紅白懐ノベ合戦!」に村上龍『限りなく透明に近いブルー』以来、群像新人賞に注目したという話題が出てくるが…

『本心』『箱男』『シン・仮面ライダー』

本心 (文春文庫 ひ 19-4) 作者:平野 啓一郎 文藝春秋 Amazon 平野啓一郎『本心』では、主人公が他人の行為を代行するリアル・アバターを職業とする一方、死んだ母を拡張現実の映像&音声で蘇らせ、仮想空間に出入りする。彼はリアル・アバターとして自分の行…

『人間の証明』と『限りなく透明に近いブルー』

先日、町田市民文学館の「森村誠一展」に行ったけど、しばらくして彼の『人間の証明』と村上龍『限りなく透明に近いブルー』が、どちらも1976年刊行なのをこれまで意識していなかったことに気づいた。 『人間の証明』は敗戦後間もなくの日本人と進駐軍の黒人…

THE MUSICAL BOX

昨夜のTHE MUSICAL BOX。ピーター・ガブリエル役は、衣裳&かぶりものだけでなくまず歌声がそれっぽかったし、パフォーマンスもよかった。楽器を持ち替えつつ演奏するメンバーたち、照明などの演出とか、初期ジェネシスは実際こんな風だったのではないかとい…

転居&子どものいない夫婦関係

ここでは書き忘れていました。同じ浦安市内ですが、8月末に転居しました。私宛てのお届け物は新住所へお送りください。よろしくお願いします。 下記インタビューの取材・構成を担当しました。 -白石一文が考える、結婚することの意味ーー最新小説『代替伴侶…

巽孝之&小谷真理 パーシー・シェリー&メアリ・シェリー

小谷真理『女性状無意識』(1994年)は出てすぐに読んでいたし、『オルタカルチャー』(1997年)での山形浩生の例の記述をみた際には「!?」となった。巽孝之・小谷真理夫妻の関係性と彼らが巻きこまれた騒動は、今年読んだ小川公代『翔ぶ女たち』でも触れら…

『異様な者とのキス』のプレイリスト

物語考 異様な者とのキス 作者:円堂 都司昭 作品社 Amazon 『物語考 異様な者とのキス』では、論じた物語のミュージカル化に関し、内容を象徴する歌について述べることもしています。いろいろな歌に触れるなかで、章ごとに特に選んだ全6曲(+1曲)は以下…

円堂都司昭『物語考 異様な者とのキス』7月24日頃発売

物語考 異様な者とのキス 作者:円堂 都司昭 作品社 Amazon 装画=中島華映「夢む」 7/19取次搬入 【内容目次】まえがき第1章 獣性 変身――『美女と野獣』第2章 醜さ 変われなさ――『ノートルダム・ド・パリ』/『ノートルダムのせむし男』/『ノートルダムの鐘…

岩波「世界」リニューアルと大江健三郎「持続する志」

岩波書店「世界」のリニューアル第1号だった2024年1月号で印象的だったのは、かつて「世界」に掲載された大江健三郎のことばの再録だ。「持続する志」(1969年1月号)、「再び持続する志」(1971年1月号)という論考が再録されており、志は今も持続している…

ゴールデンウィーク進行

今年はゴールデンウィーク進行に悩まされていない。去年もそうだった気がする。 以前は定期的に書いている媒体は月刊が多くて(一時期は月2回刊もあったな)、連休のしわ寄せで前後のスケジュールがきつくなったけど、今は隔月刊や季刊ばかり。不定期なネッ…

坂本龍一と和賀英良

「坂本龍一のピアノ展」で本人の演奏を再現したピアノ自動演奏を聴き、松本清張『砂の器』の和賀英良を連想した。原作小説では電子音を使った抽象的な現代音楽の作曲家なのに、映像化ではロマンティックなピアノ協奏曲の人に脚色された。むしろ、それゆえに…

渡邉大輔『謎解きはどこにある』

謎解きはどこにある――現代日本ミステリの思想 作者:渡邉大輔 南雲堂 Amazon 栗本薫『ぼくらの時代』と対であるかのように中島梓が刊行した文芸評論集『文学の輪郭』を読んだことが、ミステリ評論に関する私の出発点の一つとなっている。群像新人賞評論部門を…

中上健次と三田誠広

昔読んだ中上健次のある発言が強烈に記憶に残っていて、最近になって今さら気になりだした。時期的にみて『中上健次1970-1978全発言I』、『中上健次1978-1980全発言II』だろうと思ってめくってみたが見当たらない。じゃあ、これかと、柄谷行人との対談『小林…

『コンクリート・ユートピア』

『コンクリート・ユートピア』、昨日観てきた。周辺が壊滅的被害を受けたなか(作中では原因不明)、唯一残ったアパートの住民が周辺地域からの避難民を追い出し、居場所を死守しようとするパニックもの。 すごい。ただ、能登半島地震の報道が続いている今す…

「良い子悪い子普通の子」

今回の松本人志の件で、ダウンタウンがいじめの芸を一般化したとか、その前にとんねるずがとかいう人がいる。でも、太郎冠者や与太郎など、間抜けな人間を笑うパターンは旧くからあるわけで、昔から笑いの多くを揶揄、嘲りなどいじめ的な要素が占めてきたの…

原始神母”原子心母”

喪中なので新年の挨拶はしません。 で、昨年末のふり返り。 昨年12月30日は、ピンク・フロイドのトリビュート・バンド、原始神母の募集した合唱隊に参加して“原子心母”を歌ってきた。同じ月にカール・パーマーが演奏したステージに自分も上ったのだった。 妻…