前日の酔いが残っていた午前中、「YES ザ・コンサート 結成35周年記念ライヴ」と題された映像を見た。これは先月23日にWOWOWで放送されたのを録画しておいたもの。ジョン・アンダーソン、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマン、クリス・スクワイア、アラン・ホワイトの5人による2004年5月15日のステージを収録したものだが、僕はここ5、6年くらいイエスを追っていなかったので(逆にいうと、それまでは追っていたのだ。ご苦労さんなことである)久しぶりに最近の彼らに触れたことになる。この映像はどうやら、上記DVD(間もなく発売予定)から数曲抜いて編集したものだったようだ。
イエス史上最もアグレッシヴなリフを持つ〈燃える朝焼け〉がセット・リストにないうえ、〈ロング・ディスタンス〉や〈ロンリー・ハート〉などベースも含めてアコースティック・ヴァージョンで披露された曲が多い。なので、イエスのハード・ロック的側面はかなり薄められていた。また、20分近くを一気に駆け抜ける大傑作〈危機〉をやらなかった。ゆえに、彼らのコンサートにしては珍しく、〈不思議なお話を〉など可愛らしい小品のほうが目立つような印象(セット・リストはアマゾンへのリンクで見て下さいませ)。体力の許す範囲で、年輪相応に熟成された伝統芸能をお聞かせしますといった趣だった。「よっ、イエス屋!」てな感じの、歌舞伎気分で見るべきものである。往年ほどのキレは望めないにしても、よく咀嚼された落ち着いたアンサンブルであって、予想以上に楽しめた。
それにしても、ジョン・アンダーソンの声の若さには驚く。グレッグ・レイクなんかは90年代に入ったとたんにしゃがれた老け声になっていたもんだが、ジョンは万年青年だ。
アレンジで面白かったのは、〈ラウンドアバウト〉をシカゴ・ブルースのシャッフル風にしたアコースティック・ヴァージョン。ブルース・フィーリングからいかにも遠そうなイエスが、この代表曲をそんなアレンジにあっさりできてしまうあたり、やっぱりロックはブルースから発展した音楽だからな――と思いつつ聞いていると、元アレンジのクラシカル・フレーズをウェイクマンやハウがところどころ混ぜるたび、やっぱり変になるんである。キング・クリムゾンの〈プロザック・ブルース〉や〈クリムゾン・キングの宮殿〉ブルース・ヴァージョン=別名“コート・オブ・ザ・B.B.キング”に通じる変さというか。この変さに、クラシックやジャズを意識していたプログレってジャンル特有の“質感”が出ている気がした。
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