ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

映画『AIR GUITAR –Episode 0-』

http://www.miraclevoice.co.jp/airguitar/
エアギターのドキュメンタリー映画。2003年の米国地区予選から世界大会(フィンランドで開催)までを追っている。


このドキュメンタリー映画では、「MAKE AIR,NOT WAR」というエアネス、エアギター道が語られている。これは、60年代の反戦キャッチフレーズ「MAKE LOVE,NOT WAR」のもじりなわけだが、たかがギターの空弾きに対して、そこまで大げさにいわなくても、と思う。世界大会の優勝決定後の場面で、クイーン〈伝説のチャンピオン〉、デヴィッド・ボウイ〈ヒーローズ〉が画面に流れるベタベタな感じも含め、本人たちが真面目だからこそ、外野から見ると笑ってしまうという映画ではある。
ただ、この映画の制作意図、制作経緯とは別のところで、なんともいえない気分にさせられることがある。


映画の中心となるのは、2003年度のチャンピオンとなったC・ディディという男。彼は、なぜか赤い着物をはおり、胸にキティちゃんをつけたかっこうでエアギターを演奏する。そのふざけた姿に、アメリカ会場の真面目なメタル・ファンからはブーイングが起きる。客のブーイングには、差別感情も感じられなくはない。C・ディディは、アメリカ人ではあるが、韓国系なのだ。しかし、彼はそれでも素っ頓狂なキャラを貫き、優勝に至る。
一方、今年4月、バージニア工科大学で32名が殺害される銃乱射事件が起きた。8歳の頃、家族でアメリカに移住した韓国系学生が、犯人だった。アメリカになじめなかった彼は、一人で戦争を起こしたわけだ。
このことを思うと、銃ではなく架空のギターを抱えたC・ディディは、確かに「MAKE AIR,NOT WAR」だったのであり、あの学生もエアギターで発散してればよかったのに……。

AIR GUITAR PRO エレキギター レッド

AIR GUITAR PRO エレキギター レッド

とはいえ、2007年世界大会でダイノジ大地が2連覇したのはいかがなものか。エアギターに関しては、パントマイム的に、動作、仕草の芸術として緻密さを増していく方向性もあると思うんだけど、大会はお笑い路線を選んだってことだろうか。