ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

日本推理作家協会監修『作家と遊ぼう!』

10時間連続シンポジウムを掲載した『早稲田文学』2号と同じく、昨年暮れに発売されたのが『日本推理作家協会60周年記念 作家と遊ぼう! ミステリーカレッジメモリアルブック』だった。これは推協の60周年記念として行われたイベント(作家によるトークセッション、ミステリー本ゲーム化会議、VTR上映、ミステリー検定、ミステリー講談・落語、囲碁大局、チャリティオークションなど)の記録。
このイベントは気になっていたものの、開催日が文学フリマと重なり、私はそちらで売り子をしていたため行けなかった。だから、こうして当日の模様をうかがうことのできる本が出るのは歓迎する。ただ、『早稲田文学』が10月のシンポを12月に雑誌掲載していたのに対し、『作家と遊ぼう!』は2007年11月のイベントを1年以上たってからムック化。もう少し早く刊行できなかったか、という印象は否めない。また、刊行まで間があくなら、もっとボーナス・トラック的なものを追加してもよかったのではないか。
例えば、『作家と遊ぼう!』には、逢坂剛×北方謙三×大沢在昌という歴代理事長が、推協とサントリーの協賛企画がらみで行ったウイスキー談義が掲載されている。それはいいとして、同じ顔ぶれでは、「問題小説」2008年2月号に「ミステリーの未来」と題した鼎談が掲載されていたのだった。この記事はNHK BSの「週刊ブックレビュー」で放映された座談を文章に起こしたもので、日本推理作家協会の歴史や「作家と遊ぼう!」イベントをふり返ると同時に、ミステリー談義もしていた。歴代理事長3人がそのように包括的な話をしていたのだから『作家と遊ぼう!』の主旨にはあっているし、同記事もムックに再録しておけばよかったのではないか、と思ったりした。

問題小説 2008年 02月号 [雑誌]

問題小説 2008年 02月号 [雑誌]


それにしても、昔から作家や評論家の講演はあったとはいえ、近年、この種のトークイベントが増えた気がする。CDの売上が落ちるかわりに夏のフェスティヴァルが乱立するようになった音楽界を、やはり不況の出版界が追いかけているような。『早稲田文学』2にしろ、『作家と遊ぼう!』にしろ、なんとなく音楽誌の夏フェス特集・増刊号に近い印象があるものな。
その点、作家や評論家のトークと音楽演奏を組み合わせた「エクス・ポ」のイベントは、フェス化の象徴といえるかも。で、「ポ・ナイト」VOL.1、2に続き、昨年末のVOL.3「ポ祭」http://expoexpo.exblog.jp/8835948/も本当は行きたかったのだが、別イベントと重なって行けなかった。「ポ祭」のほうは活字化の予定はないのかしら? 内容が知りたいんだけど。