ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

ジョリッツ×キスエク

9/28 横浜 THE CLUB SENSATION

ジョリッツ / xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キスエク)

 

昨夜はジョリッツ×キスエク。ロックに触れた高校の頃、同時代のニューウェイブを聴きつつ、すでに円熟していたプログレの旧作へ遡った。このへんが私のリスナーとしての根っこ。なのでサエキけんぞうのバンド×プログレ・アイドルの組みあわせに魅かれた。

 

めるたん卒業でかわいいからかっこいいへ重心を移した3人体制のキスエクは、気合いの入ったパフォーマンスを見せてくれた。存在感を増す浅水さんのキャラクター+小嶋さんの髪の色+萌氏の趣味性からすると今後ゴス色を強めるのもいいかも。

 

高校時代の部室ではハルメンズをラジカセで流していたし、泉水敏郎がドラムを叩いたヒカシュー『うわさの人類』や巻上公一『民族の祭典』は愛聴盤だった。なので今、元ハルメンズのサエキ、泉水のいるジョリッツの生演奏を目の当たりにするのは感無量。

 

萌氏の好きなBiSが非常階段とのコラボでカバーした“好き好き大好き”。そのオリジナルを歌っていた戸川純のバックで泉水敏郎はドラムを叩いていた。てなこと踏まえるとジョリッツ×キスエクの対バンにはカルチャーの継承もみてとれて面白かった。

 

ジョリッツ暴発

ジョリッツ暴発

 

 

 

 

xoxo(Kiss&Hug) EXTREME 2nd ワンマンライブ ?UNION? 2019.7.25 渋谷WWW [DVD]
 

 

『子育てとばして介護かよ』『カイゴッチ』

 島影真奈美さんの『子育てとばして介護かよ』購入。
 私の場合、夫婦に子どもがいない状態で母が背骨の圧迫骨折を経て要介護状態になったのだけど、同居して面倒をみるのは無理だとすぐに判断。家で付き添っていたのはごく数日でショートステイ→外科病棟入院→ショートステイのはしご→老人ホーム入居という展開となり、いわば間を置かずに外注に出したわけだ。その意味では、“子育てとばして介護までとばした”ようなものかもしれない。
 ただ、他県に住む義父母が、これからどうなることやら……。前もって心づもりをしなきゃと思って同書をこれから読む。
 
子育てとばして介護かよ (角川書店単行本)

子育てとばして介護かよ (角川書店単行本)

 

 

 ライター/編集者の介護体験記という点では、「Jポップ批評」などで私も世話になった藤野ともねさん(今は「モノマスター」書評の編集担当)が以前に「カイゴッチ」を出していた。DEVOやドアーズなどロックを引きあいに出して介護を語るという、なかなかファンキーな本だ。

 

カイゴッチ 38の心得 燃え尽きない介護生活のために

カイゴッチ 38の心得 燃え尽きない介護生活のために

 

 

芦沢央『カインは言わなかった』

 ダンス・カンパニーが題材の芦沢央『カインは言わなかった』。妻を津波で亡くした芸術監督が「オルフェウス」を題材に舞台を演出したり、被災地とかかわりのある人物が他にも登場するなど、震災後文学の要素を含んでいる。“そこが主眼ではないが”ということもテーマの一部になっていることが興味深い。

 同作に関しては、間もなく発売の某誌に書評を寄せた。

 

カインは言わなかった

カインは言わなかった

 

 

 

 

最近の自分の活動

-7月31日のトーク・イベントの記事がアップされた。 → 円堂都司昭×楠芽瑠×一色萌×高木大地×成松哲のプログレ強化講座レポート、あるいは、キスエクという現象 https://spice.eplus.jp/articles/254165

-9月10日のゲンロンカフェのイベント。タイムシフト視聴は9月17日まで。 → 円堂都司昭 × 速水健朗 「悪夢の現実と対峙する想像力─円堂都司昭ディストピア・フィクション論』刊行記念」 https://live2.nicovideo.jp/watch/lv321473604

Vera Lynn"We'll Meet Again また会いましょう”

時事通信 「バイバイ英国」盛大にパーティー=オランダ小村、予約1万人超

https://www.afpbb.com/articles/-/3242389

[英国が欧州連合EU)から離脱する予定の10月31日]

[EU加盟国の名産を飲食しながら、砂浜で対岸の英国に向かって手を振る予定。第2次大戦中にヒットした英歌手ベラ・リンの名曲「また会いましょう」などをバンドが演奏する]

 

 Pink Floyd『The Wall』の“Vera”はこのVera Lynnを題材にしており、その詞には「We would meet again」という”We’ll Meet Again また会いましょう”に対応したフレーズも織りこんでいた。

 同アルバム全体を演奏したライヴ『Is There Anybody Out There? The Wall Live 1980–81』では冒頭にVeraの歌がほんの少し流れる。

 

 また、”We’ll Meet Again“はキューブリック監督『博士の異常な愛情』最後の核爆発シーンに流れたことでも有名。

 

 

最近の自分の仕事

-劉慈欣『三体』、澤村伊智『ファミリーランド』の紹介 → 「小説宝石」9月号 https://www.bookbang.jp/review/article/581761

-成毛眞『人生も仕事も変わる!最高の遊び方』の紹介 → 「モノマスター」10月号

-産経新聞9月2日「不気味なディストピア作品に脚光…現実社会に近づく?」https://www.sankei.com/life/news/190902/lif1909020016-n1.html でコメント ← 電話取材で30分以上話しても、わずかしか使われないとわかってはいた。だが、それにしても発言の雑な切りとられかたにがっかり。ポリティカル・コレクトネスについてはそんな単純な話ではないし、それについては下記のゲンロン・カフェのイベントでと思っている。

 

9月10日(火)

円堂都司昭×速水健朗「悪夢の現実と対峙する想像力ーー円堂都司昭ディストピア・フィクション論』刊行記念」

詳細はこちら↓

https://peatix.com/event/1059025

 

SUMMER SONIC 2019

8月16日に観たもの

THE STRUTS~BiSH(後半)~アキラ100%Little Glee Monster~PALE WAVES~BANANARAMA(後半)~The Birthday~BJORN AGAIN~TWO DOOR CINEMA CLUB

 

 この日はROBERT GLASPERで締めようと思っていたが、強風の影響でBEACH STAGEが全面中止になったので調子が狂ってしまった。

 

 以下、簡単なメモ

・ほぼ横に近い位置から見たアキラ100%の面白さ。

・思っていたより中低音の声にハリがあるのがいいなと思ったLittle Glee Monster

The Birthdayではチバユウスケのカッコよさに鳥肌。髪や髭に白いものが混じってもあのささくれた声は変わらなかった。

・BJORN AGAINはABBAをただコピーするだけでなく、“Gimme Gimme Gimme”の途中に同曲をサンプリングしたMadonna”Hung Up”を挿入したり、”S.O.S.”に「I'll send an SOS to the world」のフレーズがあるThe Police”Message In A Bottle”をつなげたり。さらにベニー役がBon Jovi”Living On A Prayer”を熱唱したのには驚いた。ABBA目当てで集まったはずの観客も大合唱。芸達者である。

円堂都司昭 × 速水健朗「悪夢の現実と対峙する想像力」

ゲンロンカフェでこのようなイベントを行います。

 

2019 9/10(Tue)19:00~21:30(開場18:00)

円堂都司昭 × 速水健朗

「悪夢の現実と対峙する想像力──円堂都司昭ディストピア・フィクション論』刊行記念」

 

当日言及予定の作品(の一部)

ジョージ・オーウェル『一九八四年』
桐野夏生『ハピネス』
新海誠『天気の子』
百田尚樹『カエルの楽園』
古市憲寿『平成くん、さようなら』
・『トイ・ストーリー』シリーズ

 

くわしくはこちら。

https://genron-cafe.jp/event/20190910/

 よろしくお願いします。

 

ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力

ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力

 

 

 

最近の自分の仕事

・「メフィスト評論賞」選考対談 法月綸太郎×円堂都司昭 → 「メフィスト」2019.VOL.2

『発禁放禁歌集』回想

 プログレッシヴ・ロックの歌詞を解説した本を出したのに伴い、先日、イベントを催した(7月31日「夏を制するものはプログレを制する!円堂都司昭『意味も知らずにプログレを語るなかれ』刊行記念~絶対合格!キスエクと学ぶ「夏のプログレッシブロック強化講座」高円寺pundit’」)。

 当日、展開次第では~と思いつつ、機会がなくて喋らなかったことがある。もともと、私が歌詞というものに興味を持ったのは、中学時代に古本で買った『発禁放禁歌集』(ルック社、1977年刊)が大きかったということだ。

 引っ越しの時に本は手放してしまったが、プログレ・イベント後に起きた、「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」をめぐる騒動があって以来、同書のことが思い出されてならない。なので、あらためてウェブで古書を注文したところだ。

『発禁放禁歌集』には、政治的だったり性的だったりの問題が指摘され、規制された歌の詞が多数掲載されていた。フォークが多くを占めていたと記憶するが、この本のおかげでザ・フォーク・クルセダーズイムジン河」や頭脳警察「銃をとれ」などは音楽を知らないまま、まず詞だけを先に知った。

 同書に詞が掲載された歌のなかには、後に普通に聴けるようになったものもある。私が高校の時に「銃をとれ」を収録した『頭脳警察2』が再発売され、ようやく音に出会えた。一方、それと前後する時期に発表されたアナーキー天皇批判ソング「東京イズバーニング」は「象徴」「殿下」の言葉を消した状態での収録だったとはいえ、当時はNHK FMでも流されたのに、後のCD化では曲自体が外された。そうであっても、今はユーチューブなどで視聴できるが。

 社会や世間の禁忌の基準は、時と場合によって揺れ動く。表現規制についてなにかいいたいのなら、最低限、そのことは意識しておくべきだ。今、ふりかざしている正義が永遠だとは限らない。それを踏まえておかなければ、後の時代にとって大切なものが永遠に失われてしまうことだってある。