ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

“再結成クイーン”、『ジュエルズII』

今朝、「めざましテレビ」でいわゆる“再結成クイーン”の映像を流していた。〈ウィ・ウィル・ロック・ユー〉と〈伝説のチャンピオン〉の一部。まあ、一大アンセムになったこの2曲は、誰が歌ってもいいよう開かれた作りになっているわけで、しかもあの上手いポール・ロジャースがマイクを握るのだから、堂々としたパフォーマンスだった。フレディ・マーキュリーとはまるで違うアドリブ感覚に、ああ、やっぱりブルース・ロック・シンガーだわ、とまたもや再確認。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041220


めざましテレビ」では、『ジュエルズII』の明日発売も告知していた。そういえば昨日、近所のTSUTAYAに行ったら、前作『ジュエルズ』が、洋楽レンタル部門の1位になっていた。ドラマ『プライド』に伴うクイーン人気再燃から、もう1年もたつのか。
この日本独自編集のベスト盤は、(CCCDへの批判をべつにしても)長年の洋楽ファンからは評判がよろしくない。でも、もう何十年も前のバンドが今この時代に聞かれようとした際、昔とまったく同じフォーマットでそのまま受容されようとするほうが難しいし、そもそも無理な話だろう。
クイーンのスタジオ・アルバムは10枚を越え、正式なベスト盤ですら『グレイテスト・ヒッツ』がI、II、IIIと3枚もある。そこへいくと『ジュエルズ』は、有名曲中の代表曲を1枚でまとめ聞きできて手っ取り早い。ただ、『ジュエルズ』に加えてほかの有名っぽい曲も聞きたいけど、オリジナル・アルバムを集めるまでの根性はない――という一般ファンは困ってしまう。『グレイテスト・ヒッツ』類に手を伸ばそうとすると、『ジュエルズ』と曲が重複して無駄が出るから。『ジュエルズII』発売は、その点のフォローなわけで入門編第2弾としてはわりと親切な選曲でしょう(といいつつ、一部リミックス収録でマニアを取り込もうともしている。さて、僕はどうしたものか)。(あと『ジュエルズ』が、以前あった日本編集盤『イン・ヴィジョン』ISBN:B00004TEWMことを考えると、そっちの企画者をあらためて褒めてあげたい気もする)
ジュエルズII
一昨日、地元のカラオケ店に行った。ハイパーJOY。〈ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン〉はフレディのようにはとても歌えないにせよ、エルトン・ジョンみたいにならばなんとかなりそうな気分になってきた。――なんとかなっているのは、生ビール大ジョッキ+ライムサワー大グラスを短時間で呑み干した自分の頭だという説もあるが。


しかし、21世紀にもなってクイーンのことを語り続けているとは、中学生の時には全然想像できなかった……。


(追記:その後、クイーンが再結成――と書いた雑誌が、あれは「再結成」ではなく「再始動」でした――と訂正記事を掲載したのを見た。たぶん、クレームが来たのだろう。この訂正記事に違和感を覚えたのは自分だけだろうか。確かに、残ったメンバーは「解散」を宣言したことはない。ブライアン・メイロジャー・テイラーが「クイーン」を名乗ることも法的には正しいだろう。しかし、音楽ファンの受けとめかた、感じかたは違うはず。クイーンが持続的に活動していたのは、フレディ・マーキュリーの死を経て追悼コンサート、《メイド・イン・ヘヴン》制作、ブライアン、ロジャー、ジョン・ディーコンで演奏した追悼曲《ノーワン・バット・ユー》の録音――実質的には、ここまで。つまり、この時点でクイーンは本当の意味では、いったん終っている。例えば、その後の「クイーン」の活動にジョンが参加していないのは、彼がクイーンを脱退したということなのか? 法的な解釈はともかく、彼の意識もファンの見方も異なるだろう。ジョンは、ブライアンとロジャーによる「クイーン」再結成には参加しなかった――というのが実態だと僕は考えている。ブライアン&ロジャーによる「クイーン」は、「46664」というイベントのための作曲はしたものの、持続的に“創作”するバンドとしては機能していない。だから、なにかイベント出演があるごとに、単発的な再結成を繰り返しているのがブライアン&ロジャーの「クイーン」であり、今回もポール・ロジャースを加えたツアーという一種のイベントとして再結成した――というのが僕の解釈である。ちなみに僕は、ブライアン&ロジャーの活動について原稿で触れる時は、クイーン残党、「クイーン」、“再結成クイーン”などと書いており、クイーン、とストレートに表記することはまずしていない。2人がともに活動することは全然否定しないし、これからも演奏や創作に頑張って欲しいと思う。しかし、クイーンというバンドの実質的変化については、原稿を書く際、明確に線引きしておきたい、というのが自分の立場だ。)