今日のTVニュースを見て仰天。京成電鉄千葉線の幕張本郷駅をまたいでいる陸橋から車が飛び出し、線路のすぐ脇に降ってきたという。駅の上みたいな場所にかかっている陸橋でも、ガードレールやらフェンスやらは、そのくらいの強度しかないわけですね……。
朝の通勤時間帯でダイヤがつまっている頃合なのに、車が電車にぶつからなかったのはかなり幸運。この駅にはJR総武線も通っていて、僕は以前、これに乗って毎日通勤していたのだ。現場をよく知っているだけに、ゾッとする。
今日のニュースでは、韓国の駅でホームレスと警官隊が、日本では公園でホームレスと名古屋の行政が衝突したことを伝えていた。それで思い出したのが、今回も残念ながら直木賞を逃した伊坂幸太郎の『グラスホッパー』ISBN:4048735470。この小説に、実に強烈なやりとりが出てくる。公園にいるホームレスに対し、区役所の担当者が「ここで暮らされると困るのです」と訴える。しかし、テント生活者は怒鳴り返すのだ。
「俺たちはさ、暮らしているんじゃなくて、ただ、生きているだけだから」
語り手は、ホームレスのこの抗議に微妙な説得力があることをごく短く指摘するだけで、すぐに話題は移っていく。こういうエピソードを変に書き込まず、あっさりすませられるあたりが、作家伊坂の美点だろう。
よく考えてみると、「ここで暮らされると困るのです」とはいえても、「生きていられると困るのです」とは、とてもいい返せない。「生きているだけだから」といわれたら、もう絶句するしかない。殺し屋たちが追っかけっこする同作のなかで、この部分は余韻が強く、とても記憶に残っている。