ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

クイーンとT・レックス

もうじきミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』の日本公演が始まるのを後押しして、ドラマ『anego』で〈ウィ・ウィル・ロック・ユー〉をオープニング・テーマに使っている日本テレビが、深夜にクイーン番組を放送している。今夜も放映される。
クイーンといえば、「レコード・コレクターズ」5月号の表紙には、ニヤッとさせられた。まるで、フレディ・マーキュリージミー・ペイジが、同じステージにいるかのようなデザインだったのだ。レッド・ツェッペリンから初期クイーンへの影響はよくいわれる。クイーンはライヴで〈移民の歌〉をカヴァーしたことがあり、フレディ追悼コンサートではロバート・プラントが〈イニュエンドウ〉と〈愛という名の欲望〉を歌った。なるほど、親近性はある。


「レコ・コレ」先月号は、70年代ブリティッシュ・ハード特集だったので、そんな夢の共演を表紙にしたわけだ。その特集は、プログレやトラッド/フォーク、グラム・ロックまでを視野に入れ、ハード・ロックを捉え直すというもので、アルバム100選では、T・レックスも取り上げられていた。
そして、続く「レコード・コレクターズ」6月号は、マーク・ボランを表紙にしたグラム・ロック特集。関連ディスク・ガイドには、クイーンやKISSも選ばれている。それを眺めていて、もう一つの“共演”を思い出した。
T・レックスが来日公演を行なった時には、僕はまだ幼かった。だから当然、故マーク・ボランのライヴを見たことはない。でも、90年代に有明コロシアムで、そっくりさん率いるトリビュート・バンド、T・レクスタシーは見た。アンコールでは、マーク・ボランが両脇にフレディ・マーキュリージーン・シモンズを配して熱唱していた。鼻血が出そうな夢の共演だが、コスプレしたトリビュート・バンドが、いろいろ出るイベントだったのである。


エレクトリック化した時期のT・レックスで、プロデューサー、トニー・ヴィスコンティの下で働いたエンジニア、ロイ・トーマス=ベイカーが、前期クイーンのプロデューサーになった。それを踏まえると、T・レックスにおいて、まるで女声に聞こえたハワード・ケイラン&マーク・ボルマンのあのバック・コーラスは、クイーンのコーラスにおけるギラギラした高音部に受け継がれたといえるかもしれない。
間もなく、T・レックスの映画『ボーン・トゥ・ブギ』(72年。リンゴ・スター監督)が、未発表関連映像を加えてDVDで発売される。この映画では、エルトン・ジョンがピアノ、リンゴ・スターがドラムで、T・レックスとスタジオ・セッションするのが一つの見せ場になっている。演奏されるのは、T・レックスの〈チルドレン・オブ・ザ・レヴォルーション〉と、リトル・リチャードの〈トゥッティ・フルッティ〉ASIN:B000000QMK
一方、クイーンは、活動初期からオールディーズなロックンロールをステージでカヴァーしており、フレディ在籍時のラスト・ツアーASIN:B000803ERI〈トゥッティ・フルッティ〉を取り上げていた。僕はクイーンのカヴァーのなかでは、〈トゥッティ・フルッティ〉が一番カッコよく仕上がっていたと思う(特にコーラスの決まりかたと前半のリズム感)。そのアレンジは、アコースティックで始まり、エレクトリックに転換する流れになっていた。そのエレクトリック部分のグリッターな響きは、原曲以上に『ボーン・トゥ・ブギ』のカヴァー・ヴァージョンを意識している気がするのだがどうか。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050302