ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「ヘドバン」

A5サイズでグラビアより活字主体のメタル雑誌といえば、1994年に「BURRN!」の別冊として創刊され、98年に休刊した「炎」を思い出す。
http://www.art-blue.jp/honoo/
「シンポジウムを読む」というキャッチフレーズ通り、あの雑誌は、様式美、伝統、歴史を重視した当時のヘヴィ・メタルの美学に基づいて、このジャンルに関するオピニオンを打ち出すというコンセプトで発行されていた。真面目な内容だったのだ。


一方、この「ヘドバン」もメタルを扱ったA5サイズの雑誌とはいえ、テイストが全然違う。アイドルとメタルの融合であるBABYMETALを巻頭で大特集し、メタルとヴァラエティの接点にいた初期のX、デーモン小暮テリー伊藤を取り上げるといったぐあいで変化球主体の内容である。これが、やたらと面白い。
「炎」が「BURRN!」というメタル雑誌から派生したのに対し、「ヘドバン」が『悶絶!プロレス秘法館』や「音楽雑誌」の元スタッフを中心に作られており、ジャンルに対する考えかたが柔軟なせいもあるだろう。
それと同時に、メタル中心のフェスであるOZZFESTが今春日本で開催された際、アイドルのももいろクローバーZが出演し、賛否両論ありつつもほぼ受け入れられたような音楽界の現状が、こういう雑誌を企画させたとも思える。その意味では、初期のXや聖飢魔IIのような過去のことを記事にしていても、今の音楽界の境界が融けたような空気感が誌面に反映されていると感じる。ぜひ、続刊してほしい。


ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』を書いた時には、Perfumeがロック・フェスに出演していることの意味、AKB48など口パクで踊るライヴ性、SNSを通したアイドル人気のドライヴ感といったことを扱った。そして、今夏のRIJFのメイン・ステージの大トリはPerfumeになり、RIJFやサマーソニックなどにアイドルが多数出演することになっている。『ソーシャル化する音楽』の延長線上でこの国のポップ・ミュージックは動き続けている。なので、今からでも遅くないので同書を買ってくださいというのが結論(笑)。