ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

坂本九とSMAP

東日本大震災から5年後というタイミングで上記のように「3.11後の音楽」をふり返る原稿を書いた。スペースの関係もあり、そこでふれなかったことがある。
バブル景気崩壊後の失われた10〜20年において、“明日があるさ”がカヴァーされ、高度成長期を象徴する歌手・坂本九のリヴァイヴァル・ブームが起きた。また、震災後にも“上を向いて歩こう”、“見上げてごらん夜の星を”がCMで使われるなど、彼の曲を通して震災復興と戦後復興のイメージを重ねあわせるようなところがあった(と、ここまでは原稿に書いた)。
それに対し、現在進行形で、この坂本九に近い存在になっていたのが、SMAPではなかったか。“夜空ノムコウ”は失われた10〜20年の日本人の心象風景を映した歌だった。また、震災の年の紅白歌合戦のトリとして歌ったなかの1曲「not alone 〜幸せになろうよ〜」には「今見る空」の一節があり、それこそ“夜空ノムコウ”の延長線上にある「空」を歌ったような内容だった。
坂本九は全米ナンバー1のヒット曲を持つ歌手だったがあまり上手いとは思われておらず、むしろ庶民的でほがらかなキャラクターで親しまれた人だった。そうしたキャラクター性も、SMAPは近い。そういう存在になっていたからこそ、先の解散騒動でみせた疲弊ぶりが痛々しくみえた。
そして、明日放送されるNHK「「震災から5年 “明日へ”コンサート」では、中居正広が司会を務め、SMAPは出演者の中心となる。