マリリン・マンソンもKORNも10年選手で、キャリア総括的なベスト盤が出てしまうんだから、グランジ・ムーヴメントの跡を埋めた90年代的ヘヴィ・ロックがもう歴史になったことを認めざるをえない。MMがそうだったように、KORNのベストでも初回限定盤(ASIN:B0003060QU)の付録DVDが見もの。KORNのなかでも特にKORN的な極めつけ7曲を、CBGBで収録したライヴ映像である。今年2月にソニックマニアで来日したKORNを幕張メッセで見たけれど、あんなだだっ広い会場とCBGBなんて狭苦しい場所では、まるで凝縮感が違う。かなりテンションの高い場面を見ることができる。
CDのほうの目玉は、新録のカヴァー2曲。そのうち、〈アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール〉は、ピンク・フロイドの2枚組コンセプト・アルバム《ザ・ウォール》ASIN:B00005GL8Tに挿入されていた同曲のPART1、2、3を抜粋して連結し、〈グッバイ・クルエル・ワールド〉まで接着している。ギター・ソロについては原曲を踏襲せずにもっと崩してもよかったと思うが、こんなわかりやすいメドレーを作ってしまう、いってみればベタなアイデアをぬけぬけとやり通した点は評価したい。フロイド・ファンとしては、やっぱりつなげてみたいよね。僕も、こういう順番で抜き出してテープに編集してみたことがあります。
それにしても、ヘヴィ・ロック勢にフロイド好きは多い。KORNやナイン・インチ・ネイルズの場合、いじめられっ子の逆襲みたいなロジャー・ウォーターズの執念深い暴力衝動にシンパシーを覚えている印象があるし、マリリン・マンソンの独裁者風ステージは、映画版『ザ・ウォール』ASIN:B00005HQBM・ゲルドフの演技を思い出させる。また、NINやMMは、《ザ・ウォール》に代表されるフロイドのコンセプト性を、自作の構成に応用してきた節がある。一方、TOOLは、《ウマグマ》〜《おせっかい》の頃のフロイドにあった音響感覚を受け継いでいる。こうした影響の残しかたからしても、フロイドは多面的なバンドだったなとあらためて思う。