ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

KORN 20日 ZEPP TOKYO

前座は10イヤーズ。
昔、長与千種が、ZEROの別名でもリングに上がっていたことを思い出した。だって、ヴォーカリストが、ZEROみたいなフェイスペイントしてるんだもん。変だった。


機材の入れ替え中、ジョナサン・デイヴィスのマイク・スタンドは、開演が近づくまで黒い布で隠されていた。マイク・チェックをする時ですら、かぶせたまま。もう一本のマイク・スタンドは普通にむき出しだったので、なおさら目立った。なにしろ、あれはH・R・ギーガーのデザインだから、舞台装置の立派な一部である。そう簡単に見せてたまるかってことでしょう(笑)。


ヘッドが脱退し4人になったKORNが登場。しばらくすると、舞台の一部を隠していた幕が取り払われ、サポート・メンバーたちも姿を現した。会場がどよめく。ギター、キーボード、パーカッション&ドラム、コーラスの4名。そのサポート連中が、ウサギだのブタだのみんな動物のマスクをしている。《シー・ユー・オン・ジ・アザーサイド》のジャケットにちなんだものだが、かぶりものした人々がステージでひしめいていると、お前らスリップノットか、と思わなくもない。
僕は、《シー・ユー・オン・ジ・アザーサイド》支持派である。でも、ライヴの音に関しては、ヘッドの不在は大きい――というのが正直な印象。マンキィがリフを弾き、ヘッドが効果的な音色を加えるのが過去の基本パターンだった。しかし、2004年のソニックマニアで聞いたのと比べると、今回のギター・サウンドはリズムが目立つかわりに彩りが薄い感じだった。新作からの曲はいいが、過去の曲についてはサポートのギター、キーボードの使い方が発展途上期か……。
一方、コーラスを加えたおかげで、メロディアスな曲のヴォーカルはより映えるようになった。特に、メドレーの一部とはいえ、美メロの〈THOUGHTLESS〉が聞けたのは嬉しい(いじめられっ子高校生の体に異物が棲み始め、プロムの夜に惨事が――というスティーヴン・キング的な同曲PVはお気に入り)。コーラス要員は、時にはギター、キーボード、パーカッションも操り、よく働いていた。
また、今回のサポート・メンバーの構成で、単純に攻撃力を発揮したのは、パーカッション。ツイン・ドラムになる場面など、やたらドカスカ鳴っていて、客がかつて以上に暴れやすい音になっていた。おかげでおっちゃんは若いもんにもみくちゃにされて、もうへとへとだよ。音圧重視のアンサンブルとしては、十分以上の成果を上げていた。
そして、8人がかりの大所帯の演奏で、最も存在感があったのはフィールディーのベースだ。以前は、ギター2本とベース1本の弦が渾然一体となって鳴ることが、KORN独特のうねりを作りだしていた。それに対し今回は、まず中心でフィールディーのベースが鳴っており、そこに足し算的に他の音が積み重なっているように聞こえた。プレイヤーの人数は増えたというのに、以前みたいな混沌ではなく、むしろ整理された音に思える。それが意外だった。
それにしても、ジョナサンの喉、強ぇぇぇ。


セットリスト:IT’ON / CLOWN / DIVINE / LOVE SONG /FALLING AWAY FROM ME / SOUVENIR / HERE TO SAY / DIRTY /LIAR /COUNTING ON ME / SOMEBODY SOMEONE / THROW ME AWAY / SHOOTS AND LADDERS 〜 NEED TO 〜 LIES 〜 MAKE ME BAD 〜 THOUGYTLESS 〜 A.D.I.D.A.S. 〜 TWIST / COMING UNDONE /GOT THE LIFE / TWISTED TRANSISTOR / HYPOCRITES /FREAK ON A LEASH / BLIND


本当は、ピンク・フロイド〈アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール〉のカヴァーも聞きたかったが、やってくれなかった。でも、5月に出るライヴ&レア集のほうには、収録されるらしい。フロイドの場合、ベース・フレーズの執念深いリフレインから曲を作る例が多いので、ベーシストが目立つKORNとしては料理しがいがあるバンドだろう。

ライヴ&レア

ライヴ&レア

(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20051219#p1