ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

高橋幸宏《BLUE MOON BLUE》

BLUE MOON BLUE

BLUE MOON BLUE

指摘されている通り、YMO《BGM》に対し《ニウロマンティック》ASIN:B000793EB6置を、スケッチ・ショウに対し有している新作。所属するユニットで実験クンを追及した後、ソロではそれを噛み砕き、親しみやすさに回帰する。
幸宏の新作が出る少し前、ヒューマン・オーディオ・スポンジ〔スケッチ・ショウ(=細野晴臣高橋幸宏)+坂本龍一〕のライヴDVDが出ていた。

これは細野がちょっとベース、幸宏がエレクトロニック・パーカッション、坂本がピアノを1曲演奏する以外、エレクトロニカ的な“卓上操作”に徹したバルセロナのステージ。幸宏が何曲かドラムを叩き、小山田圭吾がゲストでギターを弾いた東京のステージ。−−2つをセットにしたものだった。けれど、スケッチ・ショウのセカンド《LOOPHOLE》発表後に行われたこれらのライヴは、アルバムと同様に、それ以前よりエレクトロニカ色を強めた内容だった。
一方、幸宏の新作は、エレクトロニカをベースにしつつ、ポップへ揺り戻している。それを踏まえると、“楽器演奏”にも力点を置きつつ“卓上操作”と融合した《BLUE MOON BLUE》の人肌なサウンドは、スケッチ・ショウのセカンド後のライヴよりも、時間をさかのぼって、ファースト《audio sponge》後のライヴの質感に近いといえる。

WILD SKETCH SHOW Live 2002 [DVD]

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上記のライヴでは、人力アコースティックとエレクトロニックな操作が、響きとしてほどよくブレンドされていた。幸宏の新作からは、あの時と同種の好ましい“なごみ”を感じる。
また今回、ブライアン・イーノジョン・ケイルとのコラボで歌っていた〈LAY MY LOVE〉ASIN:B000A3MHWGことも、《BLUE MOON BLUE》の大きな加点要素。そういえば、《ニウロマンティック》には、ロキシー・ミュージックでイーノの同僚だったフィル・マンザネラとアンディ・マッケイがゲスト参加していたんだった。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041011#p1