ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

歌野晶午『魔王城殺人事件』

魔王城殺人事件 (ミステリーランド)
不可能犯罪が起きて名推理による謎解きで終わる、いかにも本格ミステリらしい本格ミステリを、歌野はあまり書かない。たとえ書いたとしても、パロディ的な形にひねりがちだ。ところが、この作品は講談社の<ミステリーランド>という一種のジュヴナイル企画であるせいか、珍しくわりとストレートに本格をやっている。作者自身も楽しんで書いたのではないか。
本編のメイントリックが子どもにウケそうな派手さを持っているのに加え、巻末の「わたしが子どもだったころ」で語られるエピソードも、短いながら印象に残るものになっている。この巻末エッセイは、ただのおまけ以上の楽しさがあって、ちょっと得した気分になった。