ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

田畑暁生『メディア・シンドロームと夢野久作の世界』

メディア・シンドロームと夢野久作の世界
メディア論meets文芸批評――みたいなものは、わりと好きだったりする。だから、メディア論関係の著書や訳書のある人が書いたこの本も買うことにした。しかし……。
夢野が執筆した時代が電話の普及期にあたっていたことなど、作品と当時のメディア環境について書いているのだけれど、両者の結びつきが弱い。夢野でなく他の作家を持ち出しても語れる内容が大半である。
そして、当時はこうだった一方、今のメディア環境はこうなってます――と付け加える書き方がされている。こちらのほうも、いかにも「付け加えた」印象である。
夢野作品、当時のメディア環境、今のそれ――が有機的に関連して論が盛り上がっていくのではなく、個々のモチーフが並列されて淡白な印象にとどまっている。
夢野をメディア論的に読む――というのは十分成り立つはずだし、やりようはあると思うのだが……。
メディア論的文芸批評としては、本書のなかで言及されている鈴村和成『テレフォン――村上春樹デリダ、康成、プルースト』(87年洋泉社)を、昔、楽しんで読んだ記憶がある。また、田畑暁生は『メディア・シンドロ〜』の注で、かつて学部在学中に「カフカと久作」を比較する論文を書いたことがあると記していた。これを見て、粉川哲夫が『カフカと情報化社会』(90年ISBN:4624011007)という本を出していたのを、ふと思い出した。あれも、けっこう面白く読んだ。鈴村や粉川の論は、個々のモチーフが関連しあい、論者なりに読み込んだ/見た“風景”を描き出せていたのだった。

ちなみに、田畑暁生編『情報社会を知るクリティカル・ワーズ』ISBN:4845904608ド集のほうは、わりと便利にめくらせてもらってます。

  • 今夜の献立
    • 鳥肉をオリーブオイル、バター、ガーリック、こしょう、ハーブ塩でソテー。そこにラタトゥイユの残りを投入してしばらく煮る
    • ごぼうとほうれん草のサラダ(マヨ、しょう油、七味、ポン酢のドレッシング)
    • 豆腐とわかめの味噌汁
    • 玄米
    • オレンジ