ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

エアロスミス〈ANGEL〉と《JOE PERRY》

『プライド』の〈ボーン・トゥ・ラヴ・ユー〉に続き、ドラマ『エンジン』ではエアロの〈エンジェル〉が使われている。で、シングルが再発されASIN:B0009OAWCS、エアロの既発ベスト盤も再プロモーションされたりしている。「えいんじぇぇえ〜」の歌いまわしが「エンジン」に近い聞こえかただから、この曲を選んだんだろう――ってのが、もはや定説ですが。
〈ボーン・トゥ・ラヴ・ユー〉が代表曲扱いされることに旧いクイーン・ファンが戸惑っているのと同じく、〈エンジェル〉への注目に旧いエアロ・ファンは違和感を覚えているはず。
クイーンは、70年代にバンドの個性を確立した。そのメンバー、フレディ・マーキュリーが、80年代のシンセ・ポップ流行に沿って作ったソロ曲を、彼の死後90年代にバンドでリメイクしたのが、クイーンの〈ボーン・トゥ・ラヴ・ユー〉だった。そうした特殊な制作事情の曲なので、70年代、80年代、90年代にまたがったみたいなテイストとなり、ある種曖昧に響くところもある。
一方、やはり70年代にバンドの個性を確立したエアロが空中分解した後、80年代に復活し放ったヒットの1つが〈エンジェル〉だった。当時はヘヴィメタ・バンドが甘いバラードを出すことが流行っており、エアロも外部ライター作〈エンジェル〉を歌い演奏することで追随したのであった。したがってこの曲にも、70年代体質を残したバンドが80年代の衣裳を着たゆえの曖昧な響きがある。
というわけで、〈ボーン・トゥ・ラヴ・ユー〉、〈エンジェル〉とも、コアなファンはあまりバンドの代表曲扱いしたがらないのだが、逆にこの2曲から香る“曖昧”な甘さこそが、不特定多数向けのドラマにはふさわしいのかもしれない。より多くから親しまれるためには、むしろ“曖昧”さが必要だって気がする。
ジョー・ペリー
その点、ジョーのソロは“曖昧”をしりぞけ、もっと無骨さを聞かせるかと思ったが、予想と違った。時流を意識するミック・ジャガー、ルーツにこだわるキース・リチャーズ――みたいなストーンズ的図式を、スティーヴン・タイラージョー・ペリーエアロスミス組にも当てはめがち。でもジョーの新作ソロは、その意味でキース的ではなかった。
ハードなギター中心のいかにもな曲が、基本線にはなっている。ドラム以外ほとんどジョー1人でプレイしたので、エアロほどグルーヴは複合的ではない。でも、そのストレートさを軸に、メロディアスな曲を少なからず配している。ドアーズの傑作バラード小品〈水晶の舟〉のカヴァーも、意外とジョーの声質はあっていた。事前に予想したより、内容にヴァラエティがある。このソロ作には、エアロのギタリストというイメージからはみ出した“曖昧”さが漂っている。
そして、“曖昧”さとポップさは、近いような違うような微妙な感じであって、あとは人それぞれの好み、ってことになる。自分は、ジョーの今回の作品、わりと好き。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050207

  • 今夜の献立
    • あじの開き
    • 塩もみキャベツ、ごぼう、大根のサラダ(から煎りしたじゃこ、味噌&マヨ、酢)
    • 玉ねぎの味噌汁に玉落とし
    • 玄米1:白米1のごはん
    • 雑酒