ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

小路幸也『HEARTBEAT』

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)
メフィスト賞受賞作家による青春ミステリ。
ニューヨークの「暗闇」から帰ってきた青年は、約束の場所におもむく。委員長は10年後、恋した不良少女にあるものを渡すはずだったのだ。しかし、夫と名乗る男が現れ、彼女は失踪したと告げる。青年は旧友の力を借りて、彼女を探そうとする。
一方、元男爵家の大きなうちでは、小学生の男の子が心を悩ませていた。お母さんの「幽霊」が出たと騒ぎになっていたのだ。
失踪した女と出現した幽霊。並行する二つのストーリーは、まず「Boy‘s SIDE」から語られ、次に「Girl’s SIDE」に移って交差し、やがて真実が明らかにされる。
青年のストーリーではCGクリエーターになった旧友、男の子のストーリーではモデルや子役をしている女の子が、それぞれ補佐役となって話は進む。CG制作やモデル稼業といった、ある意味で虚構まみれの存在である旧友や女の子が、無垢な青年/男の子に寄り添おうと自らのピュアな部分を発揮する、この微妙なねじれぐあいが“切なさ”をつのらせる。メインのサプライズは定型の範囲内といえるかもしれないが、青春/少年少女小説としてのポイントは高い。