ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

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『デトロイト・メタル・シティ』と『テネイシャスD』

伝説的ブルース・マン、ロバート・ジョンソンには、十字路で悪魔に魂を売り渡してブルースの真髄を手に入れたというクロスロード伝説がある。ロックにおける悪魔嗜好も、さかのぼればこの伝説にたどり着く。ロック・アーティストとして成功するため、悪魔の…

『ライムスター宇多丸のマブ論 CLASSICS アイドルソング時評2000-2008』

最近自分が書いたもの。 「アイドル論の金字塔」(『マブ論』に関するコラム) → 「ROCKIN’ON JAPAN」9月号 上記の原稿でも絶賛したけど、宇多丸の『マブ論』は名著である。 「クイックジャパン」最新号asin:4778311434の宇多丸インタヴューを読むと、彼は「…

『バンビ〜ノ!』

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嵐の松本潤主演でドラマ化され現在放映中のこれを、毎回、なんとなく見ている。 イタリア料理人を目指す若者の話だが、店ではなかなか料理をさせてもらえない。ひたすら皿洗いが続いたかと思えば、ホールに回されて接客することになったり。したい仕事をなか…

コンピュータのキーボードとケータイのボタン

(小説系雑誌つまみ食い 18−−「群像」6月号、「新潮」6月号) 橋本勝也「具体的な指触り」 「群像」6月号に、群像新人文学賞評論部門の優秀作として、橋本勝也「具体的(デジタル)な指触り(キータッチ)」が掲載されている。すでに一部で話題にされてい…

若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』3

この巻の後半は、凶悪なメタル・バンドが集まるフェス「サタニックエンペラー」が、話の中心になる。でも、同じジャンルのメタル同士で対決すると、イメージのインフレが起こりやすいし、あまりいい展開だとは思えない(クラウザーさんだけでなく、DMCの…

島本理生『大きな熊が来る前に、おやすみ。』

若い女が部屋で男とすごしている――というシチュエーションを中心にした話が、三つならんでいる。動物をある種の象徴として扱っていること、暴力性や悪意をテーマにしていることで、三篇は共通している。 このうち「猫と君のとなり」は、あのハッピー・エンド…

昭和館&東京国立近代美術館

「昭和の日」だった一昨日のこと。九段下にある昭和館、竹橋にある東京国立近代美術館の所蔵作品展がいずれも無料だったので、はしごしてきた。 まず、昭和館で特別企画展「手塚治虫の漫画の原点 戦争体験と描かれた戦争」(これも無料)を見てから、常設の…

鈴木透『性と暴力のアメリカ 理念先行国家の矛盾と苦悶』

学校における乱射事件という、あの国の伝統行事がまたもや繰り返されたので、積読になっていたこの本を遅ればせながら読んでみた。 よい。 「胎児を殺すな」と中絶に強行に反対する勢力が存在する一方、人殺しの道具である銃の規制には恐ろしく鈍感だという…

林真理子×佐藤寛子

(小説系雑誌つまみ食い 17 「小説すばる」5月号) 林真理子が今度、グラビア業界を舞台にした連作短編集『グラビアの夜』asin:4087748553をまとめるのだという。その刊行にあわせ、以前、林が取材した佐藤寛子とのスペシャル対談「グラビアを生きる、グラ…

綿矢りさ『夢を与える』

(小説系雑誌つまみ食い 16――「すばる」5月号、小説系とはいえないけど「論座」5月号) 「すばる」5月号に、「『現在』女性文学へのまなざし。」の第一回として、綿矢りさインタヴュー(聞き手:榎本正樹)が掲載されている。ここで綿矢は、初めての「長…

見城徹『編集者という病い』

編集者という病い作者: 見城徹出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2007/02/21メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 37回この商品を含むブログ (100件) を見る 70年代後半から小説誌「野性時代」の編集にかかわり、中上健次、村上龍、つかこうへい、三田誠広、…

梅佳代

(小説系雑誌つまみ食い 15――「小説すばる」4月号) 「小説すばる」では4月号ASIN:B000O58XRI、「かっぺ道」と題した梅佳代の新連載がスタートした。彼女の写真に自筆コメントを付けたスタイルであり、担当編集者は 地域に土着した所謂“かっぺ”と呼称され…

北田暁大「思考の遊歩」最終回

昨日の話の続き、みたいなもの。 (小説系雑誌つまみ食い 14――「文学界」3月号) 北田暁大の「思考の遊歩」最終回を読む。この連載はたまに目を通す程度だったが、前号の第十一回「ディズニーランドからの『転向』」〜最終回「テーマパークの二重性」への流…

アグネス・ラム

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「団塊パンチ」最新号の表紙、巻頭グラビアがアグネス・ラムであることに、とっても違和感を覚える。団塊世代の青春時代を再検証するのが同誌の路線であるはずだが、彼女の全盛期は1975〜1976年であり、いわゆる“新人類”の中高生時代にあたるのだか…

『はじめての文学 村上龍』『同 村上春樹』

すでに、第2回配本で『よしもとばなな』ASIN:4163598308でいる『はじめての文学』シリーズ。 文藝春秋HPhttp://www.bunshun.co.jp/book/hajimete/index.htm 第1回配本は、『村上龍』と『村上春樹』だった。 『村上春樹』の場合、「かえるくんのいる場所…

「能舞エヴァンゲリオン」

ガイナックスのサイトにおいて、期間限定(明日まで)で配信されている「能舞エヴァンゲリオン」の動画を見た。 http://www.gainax.co.jp/eaw/ 『新世紀エヴァンゲリオン』を能にアレンジしたものだが、新たに曲を作るのではなく、伝統的な曲の抜粋で構成さ…

魔界デス都市ノート

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(小説系雑誌つまみ食い 10――「小説NON」12月号) 小説NON (ノン) 2006年 12月号 [雑誌]出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2006/11/22メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 10月号から、菊地秀行が『魔界都市ブルース』の新シリーズを連載して…

「BET」vol.0 創刊準備号

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(文学フリマで買った同人誌 2) 発行人は、ばるぼら。「X−MAGAZINE」、「Jam」、「HEAVEN」の全冊レビューを行った自販機本特集のほか、羽良多平吉のインタビュー、吉祥寺マイナー特集が掲載されている。とんでもなくディープな内容だ。…

「Re:Re:Re:」Vol.4

(文学フリマで買った同人誌) ライター、近藤正高の個人誌で、東京オリンピックの特集。 http://d.hatena.ne.jp/d-sakamata/20061112/p1 これまでにも近藤は、成田空港、新幹線などをモチーフに都市論、昭和論を書いていて、僕はこの路線のファンなのだ。 …

『夜のミッキー・マウス』と『邪魅の雫』

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夜のミッキー・マウス (新潮文庫)作者: 谷川俊太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/06/28メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (51件) を見る 昨日、仕事帰りの京葉線で、ちょっと前に文庫化された『夜のミッキー・マウス』を読…

新井満『自由訳 イマジン』

自由訳 イマジン作者: ジョンレノン,オノヨーコ,John Lennon,新井満出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2006/08メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 21回この商品を含むブログ (9件) を見る 気になっていた本である。反戦歌として有名すぎるジョン・レノン…

『八犬伝』@【海難記】をめぐって

小学校時代には、夏休みの自由研究として里見家の歴史をまとめ提出したという、『八犬伝』好きの子どもだったのだ、僕は。 里見は実在した大名であり、『南総里見八犬伝』の「南総」とは房総半島の先っちょ(安房)あたりを指す。だから、千葉県民である僕に…

「STUDIO VOICE」9月号

昨年の「SUTUDIO VOICE」6月号の「最終コミックリスト200」、今年の「ユリイカ」1月号の「マンガ批評の最前線」、「KINO」VOL.01の「マンガ新世紀宣言!!」ASIN:4309906753、そして上記の「現在進行形コミック・ガイド!」……。ラノベ語り…

大槻ケンヂと橘高文彦《踊る赤ちゃん人間》

踊る赤ちゃん人間アーティスト: 大槻ケンヂと橘高文彦,小泉豊,大槻ケンヂ,滝本竜彦,橘高文彦出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント発売日: 2006/07/20メディア: CD購入: 3人 クリック: 32回この商品を含むブログ (120件) を見る この2人に、三柴理ま…

「団塊パンチ」創刊2号のビートルズ特集

団塊パンチ (2)出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2006/07/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る 「元気な50代のための意識革命マガジン」を自称する団塊世代向けの雑誌が、「ビートルズは過去にならない」と題した特集を組…

乙一『銃とチョコレート』

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〔かつて子どもだったあなたと少年少女のための――〕と銘打たれた〈ミステリーランド〉の一冊として、乙一を読む。考えてみると、これは、ちょっと不思議なことかも。 〔少年少女のための〕本としてライトノベルに視線が集まり始め、「ファウスト」に象徴され…

米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』

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本自体は、発売された春に読んでいた。でも近頃、どんどん夏らしくなってきたことだし、書きとめておくにはいいタイミングかな、と。 シリーズ前作は『春期限定いちごタルト事件』だったし、今後、『秋期限定モンブラン事件(仮)』も予定されている(http:/…

若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』1

今さら多くを語るまい。ロックの本質を鋭く抉り出した(笑)快作である。 オシャレ音楽好きの不器用で朴訥な地方出身童貞青年が、素のままでは立ち居振る舞いがうまくいかない。大学入学時に上京し、すでに卒業しているのだから4年以上たつというのに、都会…

筋肉少女帯《ナゴムコレクション》

筋肉少女帯 ナゴムコレクションアーティスト: 筋肉少女帯,大槻ケンヂ,ケラ,鈴木直人出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC発売日: 2006/06/21メディア: CD購入: 4人 クリック: 26回この商品を含むブログ (35件) を見る 以前出ていたインディーズ時代の集大成…

堀井憲一郎『若者殺しの時代』

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社会における「若者」のポジションの変化をテーマにした80年代論。この時代を相手にする時、クリスマス・デート、ディズニーランド、ラブストーリーといった本書みたいなアングルは目新しくない。けれど、「ずんずん調査」ならではのフットワークで、さく…