(小説系雑誌つまみ食い 17 「小説すばる」5月号)
林真理子が今度、グラビア業界を舞台にした連作短編集『グラビアの夜』asin:4087748553をまとめるのだという。その刊行にあわせ、以前、林が取材した佐藤寛子とのスペシャル対談「グラビアを生きる、グラビアを描く」が掲載されている。
この対談は、林が佐藤のことを繰り返し繰り返し、美人だ美人だ美人だとほめ続けるのが、どうにもうっとおしい。
とはいえ、「論座」5月号の綿矢りさ×篠山紀信対談と比較しつつ読むならば、興味深い部分もある。あちらの対談は、アイドル女優を題材に小説を書いた作家が、アイドルを撮り続けてきたカメラマンに話を聞く構図だった。そこでは互いに、アイドルに対しワンクッション距離があった。
そのことは、綿矢の作品のタイトルが、『夢を与える』だったこととも関連しているだろう。同作において「夢を与える」という言葉を口にするアイドルは、どこかにある「夢」が彼女の前を素通りしていくような、彼女自身には「夢」が与えられない、空虚な媒介者として生きていたのだから。その空虚さが、読みどころでもあった。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20070410#p1)
一方、グラビアアイドルである佐藤寛子は、林真理子に対し、自分のポジションについてこう語る。
私は、野心のないのは絶対に嫌なんです。といって、自分が夢を叶えるすべを知っているかと言われても、それは来たお仕事をきちんと自分なりに解釈してやっていくことでしかできないけれど。やっぱり、エッチな雑誌のちょっとしたページをやるのでも、いずれ「週刊プレイボーイ」の表紙を飾りたいとか、そういう夢があったからこそできたというのはあります。
この発言を読んで思った。そういえば、綿矢の小説には「夢を与える」というスローガンのの空虚は書かれていたけれど、「夢を叶える」などという主体的な上昇志向は希薄だったな、と。
そして、ついでに思うわけだ。「夢を叶える」とは、なんて林真理子的で貪欲な言葉なんだろう、と。林真理子化する佐藤寛子?