ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

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今さら「あいのり」

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もう何年もチャンネルをあわせていなかった恋愛観察バラエティ「あいのり」を、昨夜、たまたま目にした。 あれは、ラブワゴンという閉じた状況で男女が海外を旅して、そのなかでカップルが成立したら、2人して日本に帰国できますってのが基本ルールでしょ。…

藤田博史『人形愛の精神分析』

人形愛「の」精神分析というより、人形愛「と」精神分析――の印象。眼、皮膚、関節などパーツごとに話題を移しながら、人形創作者/愛好家に向け、ラカン派精神分の考えかたをわかりやすく伝えようとしている。その意味では、入門書の一種になっている。ただ…

新城カズマ『ライトノベル「超」入門』

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日本国内マーケットでの軽やかさを意識し、試行錯誤した結果、「ライトノベル」という名前と内容に至った。/ライトノベルは“ジャンルを使いこなしている”。/ライトノベルは「連載が物語ごとに分冊されている月刊誌」に近い。――などと、著者はいう。 そして…

切通理作『失恋論』

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切通理作の著書を読むのは久しぶり。自身の失恋体験の回想を軸に、失恋の考察、失恋に関連する作品の紹介を組み合わせた本。まぁ、こういうものを読むと、当然、自分の体験を思い出したりするわけですが、ここには書きません。ええ、書いたりしませんとも。 …

プレフューズ73《セキュリティ・スクリーニング》(と「キャラ」立ち)

べつに、荒んだ気分なわけじゃないけれど、ズッタズタな感じが聞きたくて、これをかけている。プツプツ切断された音が、なんだか気持ちいい。 で、思い出したのが、「ユリイカ」1月号「特集*マンガ批評の最前線」ISBN:4791701429。そこでは、伊藤剛『テヅ…

菅野聡美『〈変態〉の時代』

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「変態」という言葉の登場と、その後の意味内容の変遷を紹介した新書。知らなかった事実が多いので、興味深く読んだ。 当初、「変態」は性欲関連ばかりを指すのではなく、精神異常、犯罪、幽霊、迷信など、広く「異常」を意味する概念だったという。また、「…

陣野俊史『フランス暴動』とあと何か

陣野俊史『フランス暴動 移民法とラップ・フランセ』を読む。昨年発生したフランス郊外暴動については、ラップが悪影響を及ぼしていると批判されたという(同国では最近また、若者向け雇用政策でもめているが)。陣野のこの緊急レポートでは、フランスにおけ…

『試作品神話』

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試作品神話作者: 大塚英志,西島大介出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/03/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 48回この商品を含むブログ (30件) を見る 大塚英志が西島大介と組んで発刊したこの絵物語は、『多重人格探偵サイコ』フェア対象作品の一…

『日本文学ふいんき語り』

ゲーム作家たちが、頼まれてもいないのに小説のゲーム化を検討してみせた『ベストセラー本ゲーム化会議』ISBN:4562035560、なかなか愉快な本だった。ゲームにするためには、なにがしかの形式化、法則化を行わなければならず、そんなアングルで見れば自ずと小…

「エヴァンゲリオン」VSピンク・フロイド

YouTubeには、変な“作品”が転がってるねえ。なにかの曲にアニメの編集映像を組み合わせて、イメージ・ヴィデオ、プロモ・ヴィデオ風にしたやつとか。 で、フロイドの〈マザー〉と「エヴァ」のカップリングを見かけた。まぁ両方、母性テーマなわけだし、「マ…

大塚英志 大澤信亮『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』

ナベプロ副社長の渡辺美佐も一部プロデュースにかかわった1970年の大阪万博を揶揄するくだりが出てくるのが、この本。 昨今のオタク・ビジネス振興ブーム、その国策性に思いっきり冷水を浴びせるのが主眼で、ついでに“萌え”を取り込んで海外進出する現代…

『DEATH NOTE』9巻

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カッコいい初期設定でスタートしたこのコミック。そのルールがどんどん複雑化し、内容が混迷を深めていくのに対し、前巻まではそれでもなんとか楽しもうと、自分を納得させるような理屈を探す気力が残っていた。やっぱり、代金払ったぶんくらいの快楽は欲し…

「下流社会」という言葉

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三浦展の本の内容は、表やグラフの数字の説明に終始しており、読みものとしてはあまり褒められたものではない。それでも、べつにいいのである。 〔団塊ジュニアの「下流化」は進む!〕 〔「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る〕 ――などなどの章題や…

オーケンと乱歩

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私のこだわり人物伝 2005年12月ー2006年1 (NHK知るを楽しむ/火)作者: 大槻ケンヂ,日本放送協会,日本放送出版協会出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2005/11メディア: ムックこの商品を含むブログ (7件) を見る NHK「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」(教…

平井玄『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』

「ミッキーマウス」の比喩がどんな風に使われているか知りたくて、『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』を読んでみた。 日本階級社会には、支配する人間と、忠実な犬と、路上を徘徊するネズミとがいる――。 と帯にある通り、ジョージ・オーウェル『動物農場…

本田透『萌える男』

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80年代に勃興した恋愛資本主義(=恋愛の商品化)が行きづまった今、萌える男こそが社会を変革する! という啓蒙書(笑)。 振り返ると、80年代には本田のいうような恋愛資本主義へのいやみとして、金塚貞文(『オナニズムの仕掛け』ISBN:4787210041)や…

綿矢りさ「You can keep it.」

(上記短編の展開に触れます) インストール (河出文庫)作者: 綿矢りさ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/10/05メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 166回この商品を含むブログ (285件) を見る 文庫化された『インストール』に追加収録された書下ろ…

桜庭一樹『少女には向かない職業』

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帯にある通り、中2女子13歳大西葵が人を殺す話。 葵の母親は、娘にこんなことを言ってしまう人である。 葵、ママだって人間なのよ。まだ若いし、やりたいこともある。葵がいなかったら、こんな島に残らずにまた東京に戻ってたと思うのよ。 母親は高卒で東…

『女王の教室』最終回

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昨夜は『女王の教室』の最終回だった。 で、修道女みたいな、黒ずくめ完全防備のヒロインの衣裳を見ていて、あらためて思った。教師が児童相手に圧倒的な上下関係を作り上げ、これほどこの世の不公平さやどうにもならなさを突きつけ、一人一人を理不尽なまで…

西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』

結末に触れているので、読む前にご承知を…… 「ファウスト」ではなく「メフィスト」に掲載された短編を集めた本だが、いっそのこと「群像」に載せればよかったのに、と思うような文学っぽさがある。「ファンタジー小説」って名称でライトノベルを並べる本屋が…

『DEATH NOTE』8巻

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一人の高校生が「死のノート」を手に入れたことによって、全世界の人々に死を与えうる力を持つようになる。そんな“一対全”の図式でスタートしたこのマンガも、初期設定の応用に次ぐ応用を重ねた結果、物語はどんどん“多対多”の形へインフレ化してきたのだっ…

ほしおさなえ『天の前庭』

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大下さなえ名義の「くらげ」という詩を、誰かの引用で読んだのが、著者の作品に触れた最初だった。彼女のいくつかの詩は、ここで読める。 http://homepage1.nifty.com/kyupi/ 彼女の詩は、つかみどころのないイメージを、つかみどころのないまま手応えのある…

「ユリイカ 特集 雑誌の黄金時代」

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見ようによっては、「特集 ブログ作法」の姉妹編的な特集。 落ち着いて感想を記す余裕がないので、思ったことを、走り書きで2点ばかり。 近藤正高id:d-sakamataが調べの執念をみせた(お疲れ様でした)「みーんな投稿欄から大きくなった サブカルチャー雑誌…

映画『リンダ リンダ リンダ』

ギターが指を骨折し、ヴォーカルまで抜けてしまった高校生ガールズ・バンド。キーボードの女の子は、やめたヴォーカルへの微妙な対抗心から担当楽器をギターにかえ、新編成で文化祭に出演することを決意する。そして、新ヴォーカルに韓国人留学生ソンさんを…

『〔冲方式〕ストーリー創作塾』

マンガの世界と同じく、作家にアシスタント制度を導入しよう――てなことは、昔からギャグとしては語られてきた。それを実際に推進している冲方丁による小説入門書。 他人の作品を引用し一般論で語るのではなく、冲方本人が自作をどのように書いたか紹介する形…

小路幸也『HEARTBEAT』

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メフィスト賞受賞作家による青春ミステリ。 ニューヨークの「暗闇」から帰ってきた青年は、約束の場所におもむく。委員長は10年後、恋した不良少女にあるものを渡すはずだったのだ。しかし、夫と名乗る男が現れ、彼女は失踪したと告げる。青年は旧友の力を借…

サンボマスター〜「野性時代」/「SFマガジン」

青少年相手に心理カウンセラーをやっている知人がサンボマスターのファンであることを、最近になって知った。驚いた。 だって、サンボマスターといったら、とにかく語りかけてくるわけですよ。言葉の決壊、声の洪水って調子で、山口隆が闇雲にどんどん迫って…

「美術手帖」6月号、あるいは西島大介

「美術手帖」最新号ISBN:B0009J4UDU、西島大介インタヴュー、舞城王太郎特別展覧会(イラスト集)、斎藤環の評論があって、なにやら「ファウスト」っぽい名前の並びである。それも当然だろう。「ファウスト」(こっちの最新号ISBN:4061795724ック掲載)が“闘…

北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』

「総括」をキーワードとする「六〇年代的なるもの」から、70年代半ば〜80年代初頭までの消費社会的アイロニズム、80年代の消費社会的シニシズムへと時代の変遷を追ったうえで、90年代以降の「2ちゃんねる化する社会」における“ナショナリズム”をロマン主義的…

「ポストライトノベルの時代へ」

最近のお仕事 乙一インタビュー「ライトノベルと、ガラスのコップ」の構成 → 「小説トリッパー」2005年春号 特集「ポストライトノベルの時代へ」 上記特集の目玉は、大塚英志×斎藤環の対談「ライトノベルをめぐる言説について」。大塚は、「COMIC 新現実」で…