ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

サンボマスター〜「野性時代」/「SFマガジン」

サンボマスターは君に語りかける (期間限定価格盤)
青少年相手に心理カウンセラーをやっている知人がサンボマスターのファンであることを、最近になって知った。驚いた。
だって、サンボマスターといったら、とにかく語りかけてくるわけですよ。言葉の決壊、声の洪水って調子で、山口隆が闇雲にどんどん迫ってくるわけですよ。カウンセラーの仕事として、悩みや苦しみを抱えたクライアントさんがもろもろ語りかけてくるのを聞いている人が、なにも余暇の時間まで、あえて歌にうるさく語りかけられる趣味を選ばなくたっていいと思うんですよ。無口なインストルメンタルとか聞いて、癒されていればいいじゃないですか。でも、余暇まで山口隆に語りかけられて四六時中話しかけられても平気な性格だからこそ、カウンセラーが天職になったのかもしれないわけですよ。ちなみに僕はサンボマスターブサンボマスターも好きなわけですよ。


久しぶりに出た別冊宝島「音楽誌が書かないJポップ批評 37」ISBN:4796646612は、「サンボマスターと青春ロック地獄変」。やっぱり、サンボマスターは今時の青春の一つの象徴なんである。
で、角川書店の小説誌「野性時代」の最新号が「青春文学からすべてが始まる」と題した特集を組んでいて、表紙がサンボマスターなうえ巻頭インタビューまで彼らなのだった。http://www.kadokawa.co.jp/sp/200310-02/main.html
これまで女優や男優を表紙にしてきた「野性時代」は、平積みされると「ダ・ヴィンチ」を小さくしたみたいなルックスだった。でも、最新号はバンドを起用しているだけに、かつての文芸&アーティスト誌「月刊カドカワ」を思い出してしまった(「カドカワ」は今でも、アーティスト本としてたまに出てるけど)。
今回、「野性時代」が青春文学の特集を組んだのは、同誌が“青春文学大賞”の募集を始めるから。同賞は1次選考を編集部が行い、残った候補作の全文を雑誌およびWebに掲載しネットの読者投票で2次選考、書店代表・読者代表・編集部による最終選考会で決定するという。http://www.kadokawa.co.jp/contest/seishun/
角川はこの賞以前に、講談社メフィスト賞を意識し、既存小説家ではなく編集部が選考する“カドカワエンタテインメントNext賞”を設けていた。今回の“青春文学大賞”もNext賞の後継的な賞だから、やはり講談社の“メフィスト賞〜「ファウスト」系”の“新青春エンタ”の流れを横目ににらんだものなのだろう。そうしてにらんだ時の、「野性時代」なりの“青春”を象徴する顔としてサンボマスターが表紙にされたのが、僕にはとても興味深い。
以前にこの雑記で触れたが、「クイックジャパン」がライトノベル特集を組んだ号には、ハルカリ特集、サンボマスター特集も載っていた。この三者の同居は、まるで今時の青春アラカルトみたいで壮観だった。(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041215#p2
そして、今時の青春を相互に補完するこの「QJ」同居三者のうち、ラノベ的なものについては、角川は「スニーカー」界隈で展開しているわけだ。だからだろう。(最新号をめくる限り)「野性時代」では、ラノベよりもオーソドックスな青春小説をやろうとしている印象。
ファウスト」系青春小説には、ラノベと純文学の中間領域的なところに分布する、一種の“屈折”感がある。“屈折”が“文学性”を呼び込んでるようなところがある。それに対し「野性時代」は、サンボマスターに“ストレート”な青春を代表させているみたいにみえる。サンボマスター自体は、“ストレート”がいきすぎて屈折しているのだが、「野性時代」の特集全体としては、“生涯青春”的な、素直な青春観が勝っているように読める。……とはいっても、“青春文学大賞”の行方は読者投票次第だから、どうなっていくのか、今後に注目するつもり。


一方、「SFマガジン」7月号ISBN:B0009MW8AO、ポスト・ラノベ/「ファウスト」系を模索する特集の第2弾「ぼくたちのリアル・フィクション2」。上記のことを踏まえれば、そうは見えないかもしれなくても、「野性時代サンボマスター表紙号と「SFマガジン」最新号は背中あわせといえるだろう。


ちなみに本日、冲方丁『〔冲方式〕ストーリー創作塾』を購入。これを読めば、〔キミにも『マルデゥック・スクランブル』が書ける!!〕らしいです。

  • 今夜の献立
    • 鶏のから揚げ(しょう油、酒、おろししょうが&ニンニクに漬けこみ、卵をからめ片栗粉をはたく)
    • 揚げびたし(しょう油&リンゴ酢&赤ワインにタカノツメ、オニオンスライスを浸した汁に、から揚げの残り、素揚げしたごぼう、にんじん、ナス、ピーマンを投入)
    • 素揚げした新じゃがに塩
    • 雑酒(玄米ごはんも炊いたのだが、揚げながら呑んでつまみ食いするうちに、腹いっぱいになってしまった。自堕落である)