上記特集の目玉は、大塚英志×斎藤環の対談「ライトノベルをめぐる言説について」。大塚は、「COMIC 新現実」で森川嘉一郎をボコボコに問い詰めたのに続き、斎藤環にも思いっ切り噛みついている。そういえば、斎藤は例のOTAKU展にもかかわっていたのだった(「おたくの個室」展示を開発好明と組んで)。
今回の「トリッパー」の特集でも、最近の慣例にならい、ヤングアダルト小説やジュヴナイルなどではなく、「ライトノベル」という呼称でまとめられている。だが、どういうわけか、大塚だけは対談のなかで「ライトノベルズ」と「ズ」を入れた言い方を繰り返している。当然、ゲラもチェックしただろうし意図的なはずだ。
最初は、舞城王太郎や佐藤友哉などを念頭においてのことか、と思った。しかし、大塚発言には次のように記された部分がある。
すごく厭味な言い方をすれば、佐藤友哉や舞城王太郎や西尾維新たちの小説が商業的に講談社で刊行可能になったんだって、言ってしまえば清涼院流水と上遠野浩平と僕が講談社ノベルスに、その手のものがビジネスになることを立証してあげたからです。
というわけで、講談社ノベルスは「ズ」ではなく「ス」なのであった。ならば、大塚が「ライトノベル“ズ”」という記述を選んだことと講談社ノベル“ス”が無関係かというと、それも違うはず。
だから僕が西尾維新のことを悪くも良くも言っていないのは、西尾は結果としてノベルズというシビアな市場のなかで、商品として生き延びているからです。
大塚は、ここでも「ズ」を選んで発言/記述している。文庫本主体の市場である「ライトノベル」に対し、あえて、というかこれ見よがしに「ノベルズ」という、新書サイズを思わせる呼称を用いているのだから、考えるところはあるのだろう。
なにしろ、森川嘉一郎が「おたく」ではなく「オタク」と表記したことを攻めまくった人である。僕みたいなOTAKU部外者からすると、ひらがなでもカタカナでもどっちでもいい感じだけれど、それほどキーワードの表記にこだわっているからには、「ズ」にもいろいろ意味をこめたんだろう。そのへん、はっきり説明してほしかったと考えます。変に気になるし、そこだけ読み心地がどうも……。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050302)
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050312)
- 3月16日夜の献立
- 3月17日の献立
村上龍の長編新作が刊行されるという。タイトルが『半島を出よ』ISBN:434400759X、えっ、千葉県民である僕に房総半島から出て行けとおっしゃるんですかい? と思わずムッとしたら、北朝鮮がらみの話だそうな。そりゃ、そうだよね。今、ただ「半島」といったら、普通は「朝鮮半島」だわな。