ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「美術手帖」6月号、あるいは西島大介

美術手帖」最新号ISBN:B0009J4UDU西島大介インタヴュー、舞城王太郎特別展覧会(イラスト集)、斎藤環の評論があって、なにやら「ファウスト」っぽい名前の並びである。それも当然だろう。「ファウスト」(こっちの最新号ISBN:4061795724ック掲載)が“闘うイラストーリー・ノベルスマガジン”と銘打ち、イラストとストーリーの結びつきの強さを謳っているのに対し、「美術手帖」の特集タイトルは「物語る絵画」なんだから。この特集は、福永信椹木野衣佐々木敦もテキストを寄せており、「群像」みたいな文芸誌の目次ともかぶるノリだあね。
また、「美術手帖」最新号で、特集に次いで大きく扱われているのは、村上隆キュレーション「リトルボーイ」展。オタク・カルチャーをアートに加工して海外で評判をとる手法は村上が確立し、それを継ぐみたいな感じで森川嘉一郎(も「ファウスト」常連)のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館「おたく:人格=空間=都市」(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050312)もあったことを考えれば、「美術手帖」(同誌も略称は「BT」だっけ)最新号は、濃厚にある種の流れを反映している。
(そのほか、この号には椹木野衣の「殺す・な博」ドキュメントも掲載)


村上隆や「ファウスト」などを同じ視野に入れて論評してきたのは東浩紀だが、彼のオタク・カルチャー論『動物化するポストモダン』の一つの原型となった評論「過視的なものたち」は、2001年に「ユリイカ」に連載されたのだった。そして、なにかと話題になった「ユリイカ 特集*ブログ作法」ISBN:4791701321は、西島大介が描いていた。そのうえ西島は、「ファウスト」批判に回った大塚英志の「COMIC 新現実ISBN:404853842X連載している。引く手あまたである。
「BT」最新号の表紙は安藤正子であるものの、特集自体の扉ページには西島大介が起用されている。「物語る絵画」というテーマにおいて、編集部が西島を重要な存在ととらえているのが察せられる。その西島は「BT」のインタヴューで、〔僕の漫画から物語を抜いちゃうと、前衛哲学書みたいになっちゃうから〕と、あの独特なシンプルな絵と物語の微妙なバランスを語っていた。
「物語る絵画」、「イラストーリー」といった時に想像される、「絵」、「物語」の自立性の揺らぎ。評論と漫画を強引に一冊に同居させた「COMIC 新現実」で起きる「評論」、「漫画」の揺らぎ。「詩と批評」の雑誌「ユリイカ」がブログを視野に入れなきゃいけないと考えた時に想定している「詩」や「批評」の揺らぎ。そんな一連の“揺らぎ”の象徴として、現在の西島大介は引っ張りだこなのだな、と思われる。もちろん“揺らぎ”は、それによって新たな融合が起きるかもしれない、といった期待含みなのだけれど……。
凹村戦争(おうそんせんそう) (Jコレクション)

  • 17日夜の献立
    • 鍋――鶏肉、大根、ごぼう、もやし、ニラ、青ネギをだし汁、おろしショウガ&ニンニク、辛子ゴマペースト、白味噌で煮て、風味付けにゴマ油(残り汁に翌日、麺を投入。朝からラーメンかよっ)
    • ミニトマト
    • 有象無象のスナック菓子
    • 雑酒発泡酒&チューハイ
  • 18日夜の献立
    • ハンバーグ(焼いたあとのサラダ油&赤ワインで、スライスした玉ねぎ、ゆずこしょう、わさび、梅肉、ハチミツを炒めてソースに)
    • レタス、もやし、ミニトマトのサラダ(黒ごまドレッシング&リンゴ酢)
    • かぶの味噌汁
    • 雑酒&チューハイ


5月18日は、イアン・カーティスが首を吊った命日である(ニュー・オーダーいうところの〈ブルー・マンデー〉ASIN:B00005HDCJ)。
各種ベスト企画や賞で知った『生首に聞いてみろ』からさかのぼり、法月綸太郎『頼子のために』ISBN:4061854011 を読む人もいるだろう。あの小説のなかで、頼子が聞いていたジョイ・ディヴィジョン〈ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート〉ASIN:B00005HDCCが、イアン・カーティスであった。合掌。


そういえば、「ファウスト」最新号では、上遠野浩平が「アウトランドスの戀 “outlandos d'amour”」と題した話を書いていた。僕は、ポリスのデビュー作《アウトランドス・ダムール》ASIN:B00009KM6I、特に〈キャント・スタンド・ルージング・ユー〉は愛聴したもんです。

「群像 特集 物語のあるアート」と「エソラ」

(2005/07/12記)
図書館に行ってバックナンバーをながめ今さら知ったのだが、「美術手帖」6月号が「物語る絵画」を特集する以前に、「群像」が5月号で「Art/物語 物語のあるアート」という特集を組んでいたのであった。「BT」同様に斎藤環が登場しているほか、会田誠澤田知子など現代アート系の作品も掲載されている。ただし、せっかくの特集なのにカラーではなく、純文学雑誌らしくいつものモノトーンなのが惜しい。
小説以外のアートにも目を向けようというのは、これからの「群像」の路線の一つなのだろう。一方、講談社は「闘うイラストーリー・ノベルス・マガジン」を名乗るライトノベル系の異形雑誌「ファウスト」を発行するほか、最近は「エソラ」の2号も出したISBN:4061795740。“絵空事”からタイトルをとった「エソラ」の場合も、小説誌へのマンガ掲載というか、小説とマンガの同格化をコンセプトにしている。同誌に関しては、かつて“中間小説誌”と呼ばれたような昔ながらのエンタテインメント小説誌を、垢抜けたポップな装いに更新しようとする姿勢が見える。
「群像」「ファウスト」「エソラ」。同じ出版社から発行される異なる性格の文芸雑誌たちが、揃って小説と絵の関係というテーマに関心を示しているのが興味深い。こんな一風変わった競合状態が、それぞれの誌面を先鋭化させてどんどんけったいに面白くなればいいと思う。