ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

ロジャー・ウォーターズと大江健三郎

死滅遊戯(紙ジャケット仕様)
ピンク・フロイド分裂後の、ロジャー・ウォーターズのソロおよびデイヴ・ギルモア主導フロイドの作品が、紙ジャケで再発される。
ウォーターズの作品では、ジェフ・ベックがゲスト参加した《死滅遊戯 AMUSED TO DEATH》が、コンセプト・アルバムとしての構成、演奏の充実度の両面で優れている。また、同作を代表する〈神話 What God Wants〉で〔God gets God help us all〕と歌う女性コーラスが、「ケツから野グソ」と聞こえる空耳も知られている(そうでもねえか?)。


フロイド関係については、あの手この手の再発売もいいけど、未発売のライヴ音源を公式CD化して欲しいってのが本音。フロイドはラジオ放送されたライヴ音源が多く、〈エコーズ〉などは、スタジオ盤よりもギターが艶やかに鳴っているテイクがあった。また、ウォーターズの《ヒッチハイクの賛否両論》ASIN:B0007WZXA8もラジオ放送された。それらの音源の一部は、かつて日本でもFMで流れたから、僕も一所懸命エアチェック(懐かしい死語)したものだ。
ウォーターズの公式ソロ・ライヴ作《イン・ザ・フレッシュ》は、演奏の出来は上々だったものの、ギルモアが歌っていたパートをウォーターズは歌わず、バックのメンバーに任せていたのが興醒めだった(法的問題でもあるのか?)。でも、ソロになったばかりの《ヒッチハイク〜》のツアーでは、決して器用ではないものの〈マネー〉や〈あなたがここにいてほしい〉などをウォーターズが声振り絞って歌い、コンセプト・メイカー兼作詞・作曲家本人ならではのニュアンス、説得力を出していた。
僕がFMで聞いた音源は、《ヒッチハイク〜》スタジオ盤と同様にエリック・クラプトンが参加していたツアー前半ではなかったと記憶するが、それでもメル・コリンズ(キング・クリムゾンetc)やアンディ・ニューマーク(ロキシー・ミュージックのサポートetc)など、いいプレイヤーがサイドを固めていた。あのライヴをもう一度、ちゃんとした音で聞いてみたい。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20040821


ところで、ウォーターズはフロイド時代の《ファイナル・カット》ASIN:B000228WRY、実質的にはすでにソロ・アーティスト化していた。《ザ・ウォール》の時点で、予兆はあったともいえる。この時期のウォーターズについて、自分は大江健三郎に近い印象を持っていたことがある。
戦時中に死んだ父親と自分の関係、創作者としての煮詰まり、自殺願望といったごく私的な問題と、国家間戦争、人種間摩擦、社会からの抑圧といった公的な問題を腑分けしない。むしろ、公私を積極的にごちゃまぜにすることで、大問題と小問題が絡み合った抜き差しならない状況の迫真性を出そうとする語り口が、ウォーターズと大江では共通している気がしたのだ。大江において父のテーマが最も前景化した『みずから我が涙をぬぐいたまう日』ISBN:4061961144は、特にウォーターズっぽかったと思う。
――とかなんとか書きながら、実は大江健三郎から遠ざかって久しい。ウォーターズのソロを聞き直したのをきっかけに、なんだかまた読んでみたくなった……。

  • 16日夜の献立
    • ぶり大根
    • 水菜、オニオンスライス、赤ピーマン、ゴーヤー、ひじきのサラダ(豚ひき肉、ニンニクをサラダ油でカリカリになるまで炒め、酢、しょう油、こしょうと混ぜてドレッシングにする)
    • ニラとえのきの味噌汁
    • 白米のごはん