ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

藤岡真『ギブソン』

ギブソン (ミステリ・フロンティア)
早朝6時にゴルフの待ち合わせをしたのに失踪してしまった上司の行方を、部下が探す話。
でも、僕には、接待ゴルフをやるようなサラリーマンの上司を敬愛する習慣がない(ものすごい偏見)。なので、子どもでも妻でも親でも恋人でもない上司を、なぜこうまで慕うのか、どうも話に入り込みにくかった。加えて、失踪は早朝だったため、聞き込み相手は早起きの老人が多くなるわけだ。なんだか地味な話だなぁ、超常的な不可能殺人が派手に連続した『六色金神殺人事件』ISBN:4198914257どと、はじめは思った。
ところが、血痕を残して消えた老人、生き別れの娘、ストーカー、脅迫者――といった要素が絡んでくるうちに、ちょっと変な空気になってくる。そのうち、ご町内に出没する謎の消防車、人力車の車夫までクローズアップされて、だんだん地味な日常からズレてくる。ふと見回すと、登場人物は変な人ばかりになっている。気がつくと、この空気感の微妙な移り変わりを楽しんでいた。
やっぱり、『六色金神』の作者ならではの変さがあります。